日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゥアレグ」の意味・わかりやすい解説
トゥアレグ
とぅあれぐ
Tuareg
アルジェリア、リビア、ニジェール、マリの4国にまたがるサハラ砂漠の遊牧民。人口100~150万。コーカソイド系ベルベル人に属す。15世紀には西アフリカのポルトガル人と交易し、奴隷、象牙(ぞうげ)、黄金、毛皮などを地中海地方と中東にもたらすサハラ横断の隊商を掌握していた。19世紀にはヨーロッパ人の植民地勢力と戦ったが、1902年にフランスに敗れてその支配下に入った。ラクダ、ヤギ、ヒツジ(南部ではウシも)を飼う。現在でもラクダの隊商を組み、家畜や岩塩を売って茶、砂糖、衣料などを手に入れる。両親と未婚の子供が一つのテントで暮らし、親族や友人関係にある何家族かでキャンプをつくって暮らす。トゥアレグはイスラム教徒であるが一夫一婦制を守っている。アラブ人とは対照的に、トゥアレグは男がベールをつけ、女は顔を覆わない。社会組織については、貴族、臣下、宗教者の三つの階級と鍛冶(かじ)屋と奴隷の二つの「カースト」が存在するのが特徴的である。トゥアレグはすべて、タマシェクあるいはタマハクとよばれるベルベル系の言語を話しているが、ティフィナクという古代フェニキア文字の系統を引く文字をも伝えている。
[加藤 泰]