トビハゼ(その他表記)mudhopper
Periophthalmus cantonensis

改訂新版 世界大百科事典 「トビハゼ」の意味・わかりやすい解説

トビハゼ (跳沙魚)
mudhopper
Periophthalmus cantonensis

スズキ目ハゼ科の魚。水陸両生魚である。福岡県柳川市でカナムツ,佐賀でカッチャムツともいう。全長10cmほどになり,体は青灰色で多少赤みを帯び,雄は橙色の婚姻色を示す。眼は頭の上に突き出て左右別々に自由に動かせる。同じように干潟の上をはい回るムツゴロウに比べてより陸生に適し,胸びれの力が強く干潟の泥の上だけでなく岩の上,木の上などにもはい上がる。有明海,八代海だけでなく本州中部以南の各地に分布する。冬には干潟の穴の中で越冬し,産卵もその穴の中で行う。それ以外は特定の巣をもたず自由に動き回り,危険を感じとると跳びはねて逃げ,身近な穴の中に逃げ込む。産卵期は5~8月,卵は長径1.1mm,短径0.7mmで産卵室の全面に付着させる。孵化(ふか)後約1ヵ月,12~13mmで底生生活に移り,1年で全長5cm前後になり産卵する。寿命は2年のものが多い。ゴカイ,ヨコエビ類などを食べる。あまり食用にしない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トビハゼ」の意味・わかりやすい解説

トビハゼ
とびはぜ / 跳沙魚
dusky mud hopper
[学] Periophthalmus cantonensis

硬骨魚綱スズキ目ハゼ科に属する水陸両生魚。日本、朝鮮半島中国台湾に分布。内湾の河口部にすみ、干潮時に干潟の泥上で活動する。陸上生活に適応し、目は頭頂部に突出し、陸上で遠視がきく。皮膚は厚いが、皮膚呼吸ができる。発達した胸びれを用いて泥上をはい回る。甲殻類、多毛類などの小動物を食べる。有明海(ありあけかい)に多く、同地方における産卵期は5~8月。雄は干潟の泥中に口でU字形のトンネルの巣を掘る。雌はトンネルの壁に卵塊を産み付ける。仔魚(しぎょ)は河口域で1か月余り浮遊生活を送り、13ミリメートル余りの若魚に成長したのち、水中と陸上の両生生活に入る。生後1年で6センチメートル余りに成長し、成熟する。寿命は2年以上。春から秋に活動し、冬には泥中の孔(あな)に潜んで休止する。有明海沿岸ではカッチャムツとよばれる。煮干しにする以外は食用にしない。水槽での飼育が容易であり、水族館などで観賞魚として珍重される。南西諸島からは同属のミナミトビハゼP. vulgarisが知られている。

[道津喜衛]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トビハゼ」の意味・わかりやすい解説

トビハゼ
Periophthalmus modestus

スズキ目ハゼ科の魚。全長 10cm内外。体はやや長く,わずかに側扁する。両眼頭部上方にやや突き出ていて,近接している。鱗は小さく円鱗。胸鰭がよく発達しており,これによって干潟などの泥底を自由にはい回ることができる。また比較的長時間水面から出て行動することもできる。泥底に穴を掘って産卵する。関東地方以南および朝鮮半島,中国大陸沿岸に分布し,泥底の発達した河口の干潟にすむ。

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百科事典マイペディア 「トビハゼ」の意味・わかりやすい解説

トビハゼ

ハゼ科の魚。地方名カナムツ,カッチャムツなど。全長10cmほどになる。東京湾以西の日本各地,朝鮮半島・西岸,中国,台湾に分布。汽水性の干潟に多い。干潮時には発達した胸びれを使って土砂の上を走ったり,跳んだりして小動物を食べる。5〜8月,干潟にトンネル状の穴を掘ってその中に産卵する。観賞用。あまり食用にしない。準絶滅危惧(環境省第4次レッドリスト)。

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