改訂新版 世界大百科事典 「トヤマエビ」の意味・わかりやすい解説
トヤマエビ (富山蝦)
Pandalus hypsinotus
体長17cmに達する寒海系の甲殻綱タラバエビ科のエビで,水産業上の重要種。日本海,北海道沿岸,千島列島,サハリン,ベーリング海などの浅海から水深350mほどまでに分布し,富山湾,噴火湾,留萌沖などが有名な産地である。近年ではとくに富山湾での漁獲量が多く,水深100~200mが好漁場となっている。冬から春に市場に出る。淡紅色で,頭胸甲と腹部に濃色の横縞がある。ボタンエビに似ているが,体色の違いのほか,頭胸甲の背隆起が高いこと,額角が強く曲がっていることなどによって区別される。額角の上縁に17~21本,下縁に9本内外,先端に1~2本のとげがある。他のタラバエビ類と同様に雄性先熟の性転換をする。体長7~8cmのものは生後満1年で未成熟,10cm内外のものは満2年の雄,12.5cm内外の中型エビは満3年のもので,雄から雌への性転換中のものである。大型個体はすべて雌で,約1年間抱卵する。抱卵数は体長14cmのもので約2000粒である。寿命は4~5年で,放卵後に死ぬ。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報