トロオドン(読み)とろおどん(英語表記)troodont

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

トロオドン
とろおどん
troodont
[学]Troodon formosus

竜盤目獣脚類(亜目)テタヌラ類(下目)鳥獣脚類Avetheropodaコエルロサウルス類Coelurosauriaマニラプトル類Maniraptoraエウマニラプトル類Eumaniraptoraトロオドン科Troodontidaeに属する恐竜。北アメリカ西部の白亜紀後期、約7705万年~6550万年前の地層から産出した。小形肉食恐竜で、全長約2メートル、推定体重50キログラム。発見された1本の歯だけで1856年に命名された属であったので、その後1920年代には厚頭竜類のステゴケラスStegocerasのものと目されたりしたこともあったが、80年代に発掘された頭骨の歯が特徴的でトロオドンの歯をもつことが明確となり、属名が復活した。1969年にステノニコサウルスStenonychosaurusと命名されていた骨格も、のちにトロオドンと同じ種類のものと判明するなど、属名でこれほどみごとな復活劇を遂げたものはほかにない。トロオドンの歯の形はきわめて特徴的で、小さく短く、大きなぎざぎざがわずかにあって、先端は三角形に近くぎざぎざはない。歯根はワニのように長いので魚をとっていたかもしれない。歯の大きなぎざぎざはまさに滑りやすいものをくわえるのに適していたし、先端の鋭い歯は切り裂くのに適していた。歯数は約122本といわれ、細かくみればさまざまな形を示す。各歯の咬頭(こうとう)がきわめて多数あるので、肉食・草食・昆虫食いずれも考えられ、とくに小形哺乳(ほにゅう)類・小形爬虫(はちゅう)類を襲ったかもしれない。脳は鳥類に引けをとらぬほど大きくバランス感覚に優れ、また立体視に優れ聴覚も発達していたが、嗅覚(きゅうかく)はほかの獣脚類よりも劣っていたらしい。化石を産出した地層の環境解析では、暖温帯から冷温帯に及び、ある程度の季節変動には耐えられたようである。湖水辺の産出が多い。特筆すべきは、1回に産卵された8個余りの卵の上に乗っている抱卵中と思われる産状を示す成体化石が発見されたことである。しかも卵は、従来、草食鳥脚(ちょうきゃく)類オロドロメウスOrodromeusのものとされたものが、実はトロオドンのものであることが詳細な検討により判明した。またオロドロメウスの胚(はい)の骨とされていたものも、トロオドンのものであると訂正された。[小畠郁生]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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