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トロポロン tropolone

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

トロポロン
tropolone

ヒノキチオール (イソプロピルトロポロン) の母体。無色の結晶,融点 50~51℃。七員環であるが,六員環で共役二重結合を有するベンゼンに似た性質を示す。つまり,トロポロンの水酸基はフェノールに似た性質を示し,弱酸性で金属イオンとキレート化合物をつくり,塩化鉄によって深緑色の呈色反応を示す。またジアゾ化合物とはカップリング反応を起す。七員環の核の部分もベンゼンと同じようにニトロ化,ハロゲン化が容易に起る。ベンゼンと異なる点はフリーデル=クラフツ反応を起さないことである。これらの性質は共鳴によって説明され,トロポロンの構造は一つの式だけで表わすことはできない。トロポロンの限界構造式は6つ考えられている。前式の C=O はある程度 C-OH の性質を有し,C-OH はある程度 C=O の性質を有する。トロポロンは有機化合物のうち構造的に興味ある物質で,いわゆる非ベンゼン系芳香族化合物の代表的一例である。

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百科事典マイペディアの解説

トロポロン

化学式はC7H6O2。非ベンゼン系芳香族化合物の一つ。ヒドロキシトロポンの別名。無色の結晶。融点51〜52℃,沸点70℃(2mmHg)。昇華性。

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世界大百科事典 第2版の解説

トロポロン【tropolone】

非ベンゼン系芳香族化合物の一つで,ヒドロキシトロポンの別名。α‐,β‐,γ‐の3異性体があるが,特記しないかぎりα‐異性体(図1)をさす。野副鉄男は1935年ころからタイワンヒノキの酸性成分からヒノキチオール(図2)を単離し,ほぼ現在の構造式に到達していたが,第2次大戦前後の時期であったため,成果が海外に伝わらなかった。この間,1945年イギリスのデュワーM.J.S.Dewarはコルヒチン(図3)などの骨格構造として図1を示唆し,トロポロンと命名した。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

トロポロン
とろぽろん
tropolone

代表的な7員環系芳香族化合物の一つ。1935年ころ野副(のぞえ)鉄男がタイワンヒノキから発見しヒノキチオールと名づけ、40年には構造決定もしたが、第二次世界大戦の混乱期のため、その成果が海外に伝えられなかった。その間、同種の研究を進めていたイギリスのデュワーJohn Dewar(1909―68)が、45年にトロポロンと命名した。50年野副鉄男、アメリカのデーリングおよびイギリスのクックが独自に合成に成功した。
 無色の柱状結晶。トロポンとヒドラジンとの反応により得られる2-アミノトロポンを加水分解して合成する。ほかにシクロヘプタン-1,2-ジオンの臭素化、脱臭化水素化や、シクロペンタジエンとジクロロケテンの付加体の加水分解による合成法がある。アルカリ塩を与えるとともに、強酸により塩を与える両性物質である。各種金属とキレート塩をつくる。臭素化、ニトロ化、アゾカップリングなどフェノール類に特有な芳香族置換反応を容易に受ける。天然物として存在するコルヒチン、プルプロガリン、スチピタチン酸、ヒノキチオール類にはトロポロン構造が含まれる。スチピタチン酸は特異な抗菌性を示し、またコルヒチンは植物の細胞分裂を抑える作用をもつので、種なしスイカの生産に利用される。[向井利夫]

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世界大百科事典内のトロポロンの言及

【非ベンゼン系芳香族化合物】より

…非ベンゼノイド芳香族化合物とも呼ばれる。アズレンやトロポロンなど中性分子のほかに,シクロペンタジエニルアニオン,シクロヘプタトリエニルカチオン,などイオン種も含まれる。【友田 修司】。…

※「トロポロン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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