改訂新版 世界大百科事典 「ドイツ座」の意味・わかりやすい解説
ドイツ座 (ドイツざ)
Deutsches Theater
ベルリンにある劇場。付属の小劇場(カンマー・シュピール)と小スタジオをもつ。もともとベルリンのシューマン通りに1850年に建設されていた劇場を,83年,当時の有名な演出家A.ラロンジュが買収・改築して〈ドイツ座〉として開場したのがその始まりである。94年にはO.ブラームの経営に移り,その監督時代にはイプセン,ハウプトマンなど現代劇を演目の中心にすえた。1905年M.ラインハルトが監督になると,私立劇場ながらベルリンの演劇の中心となり,多くの名優をそろえ,シェークスピアから現代劇までの幅広い演目を誇った。近代の小劇場運動でも先駆的な役割を果たしている。ラインハルトは第1次世界大戦後の一時期を除いて,ナチスの台頭する直前までその地位にあり,数々の絢爛かつ壮大なスペクタクル的演出によって,世界の注目を浴びた。彼の後を襲ったヒルペルトは,ナチスによって国家に統合されたこの劇場の水準の維持に努めた。戦争による焼失を免れたため,戦後は《賢者ナータン》でいち早く開場し,やがてラングホフが総監督に就任した。第2次大戦後は東ドイツの国立劇場として,古典劇の受容,現代東ドイツ作家の発見,社会主義リアリズム学習のためのソビエト劇の促進,という三つの路線を掲げて,模索しながら劇場の特色を打ちだしていった。B.ブレヒトの劇場〈ベルリーナー・アンサンブル〉も,現在の劇場を与えられるまでは,ドイツ座に同居していた。いくたの名優が登場したドイツ座は,東西ドイツ統合後もドイツの代表的な劇場の一つである。
執筆者:岩淵 達治
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