ドップラー効果(読み)ドップラーコウカ(英語表記)Doppler effect

翻訳|Doppler effect

デジタル大辞泉 「ドップラー効果」の意味・読み・例文・類語

ドップラー‐こうか〔‐カウクワ〕【ドップラー効果】

波源と観測者とが互いに近づくときは波長が縮み、互いに遠ざかるときは波長が伸びて観測される現象。1842年、ドップラーが光について発見、のち音についても指摘した。

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精選版 日本国語大辞典 「ドップラー効果」の意味・読み・例文・類語

ドップラー‐こうか‥カウクヮ【ドップラー効果】

  1. 〘 名詞 〙 波源と観察者が相対運動している場合、観察者の測定する波の振動数が、真の波源の振動数と異なるという現象。互いに近づくときは波長が縮み、互いに遠ざかるときは波長が伸びる。近くを通り過ぎる列車汽笛音程が、急に下がるなど。〔自然科学的世界像(1938)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「ドップラー効果」の意味・わかりやすい解説

ドップラー効果 (ドップラーこうか)
Doppler effect

線路のそばで近づいてくる電車の警笛を聞くとき,電車が通り過ぎると急に音が低くなる。また電車に乗っていると,前方の踏切の警報機の音が,それを通り過ぎるとたんに低くなり,すれ違う電車の警笛の音も同様である。これらは日常しばしば経験することであるが,このように音源と観測者との一方,または両方が運動しているとき,観測者の聞く音の高さ(すなわち振動数)が変化する現象をドップラー効果という。1842年オーストリアの物理学者J.C.ドップラーが,二重星の光に関して,星の運動方向と色の変化(色の変化は振動数の変化による)を論じたのが発見の最初である。

 静止している観測者に向かって,振動数f0(Hz)の音を発する音源が速さvs(m/s)で近づいてくる場合を考えよう。音の速さはv(m/s)とする。ある瞬間に音源から送り出された音波の山は1秒の間にvだけ進む。この間に音源もvsだけ進み,その間にf0個の音波の山を送り出す。したがって音源の進む方向ではvvsの間に波の山がf0個あることになるので,波長はλ1=(vvs)/f0となり,音源が静止している場合より短くなる。しかし波の進む速さは変わっていないので,観測者にとってその音の振動数は,となる。すなわち,振動数が増えたことになり,実際の音源より高い音として聞こえる。音源が遠ざかる場合は,となる。

 次に,音源が静止していて,これに向かって観測者がvO(m/s)の速さで近づく場合を考える。音源が静止しているので空間を進む音波の波長は変化せず,λ=v/f0である。しかし運動している観測者に対して波の山は速さvvOで近づいてくる。その結果,観測者にとって波の振動数は,となる。音源も観測者も動く場合には,音源から観測者に向かう向きを正として速さvsvO符号をとると,上の二つの式を組み合わせて振動数は,となる。

 ドップラー効果は,音に限らずすべての波動現象に見られる。ただし光の場合には光速が非常に速いため,通常,ドップラー効果の影響はきわめてわずかであり,光源と観測者の相対速度が光速に比較できるほど十分に速い場合のみ観測される。星や星雲の中には,地球に対して視線方向に非常に大きな相対速度で遠ざかりつつあるものがあり,そのスペクトルを精密に観測すると,特定原子線スペクトルがドップラー効果によって赤の側(長波長側)にずれていることがわかる。これを赤方偏移といい,そのずれの大きさから,その星と地球の間の視線方向の相対速度を求めることができる。

 マイクロ波のドップラー効果は航空機自動車の速さの測定に応用されている。またレーザー光のドップラー効果を利用して,液体流速を測定するドップラー流速計も実用化されている。
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百科事典マイペディア 「ドップラー効果」の意味・わかりやすい解説

ドップラー効果【ドップラーこうか】

光や音などの波の振動数が波源や観測者の運動によって変化して観測される現象。1842年ドップラーが発見。一直線上を波源と観測者が媒質に対して速度v,v′で動くとき,波源の振動数をn,観測者が観測する振動数をn′,媒質に対する波の速さをaとすれば(式1)したがって波源と観測者が近づくときもとの振動数より大きく(音なら高く),遠ざかるときは小さく(同じく低く)観測される。ドップラー効果は音に限らずすべての波動現象で見られるが,光の場合は光速が非常に速いため,ドップラー効果の影響はほとんどない。しかし光源と観測者の相対速度が非常に大きく光速に比較できるとき,ドップラー効果による影響が観測される(赤方偏移)。この関係を利用し天体のスペクトルの観測から視線速度を計算できる。
→関連項目アルゴス・システム近接信管シュタルク速度計フィゾー流速計流量計

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法則の辞典 「ドップラー効果」の解説

ドップラー効果【Doppler effect】

音源と観測者の間の相対運動がある場合,観測者には静止の場合とは異なった波長,振動数が観測される.発信源と観測者が近接する場合には振動数は増加し,遠ざかる場合には振動数は低下する.これは1842年にオーストリアのドップラー(J. C. Doppler)が提案したものである.3年後の1845年にオランダのボイス・バロットが実験的に証明した(彼は貨物列車にトランペット奏者をのせ,絶対音感をもっている人間を何人も集めて音のずれを観測させ,実験的な証明を行ったという).

光のドップラー効果は,光源と観測者との相対運動に基づくもので,シリウスのスペクトルについて1868年に観測されたのが最初といわれている.遠ざかる方向へ移動する光源からのスペクトル線は波長の長いほうにシフトして観測される(赤方偏倚*).これをもとに遠距離の銀河系の移動速度と距離との関係が求められた(ハッブルの法則*).

光のドップラー効果において,相対性理論に従うと,互いに v なる速度で移動する任意の二つの座標系 SS′ において測定された振動数 ν,ν′ に対して

となる.ここで u は波動の位相速度,φ は光波の進行方向と観測者の移動方向とのなす角度である.

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知恵蔵 「ドップラー効果」の解説

ドップラー効果

波の発生源に対して動いている人には、波の振動数がずれてみえること。振動数は、発生源に近づく時は大きく、離れる時は小さくなる。救急車の音が追い抜かれる前は高く、抜かれた後は低く聞こえることで実感できる。19世紀半ば、C.J.ドップラー(オーストリア)が解明した。

(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典(旧版)内のドップラー効果の言及

【ドップラー】より

…35年にはアメリカ移住を決意してミュンヘンまでいったが,結局プラハの州立中等学校の数学と会計学の教授職につき,その後41年には,プラハの国立工業大学に移り,基礎数学と実用幾何学の教授となった。42年に,《二重星と若干の他の天体の色光について》と題する論文を発表し,その中で観測される波の振動数が,波の伝搬する媒体に対する波源の運動や観測者の運動に関係すること,すなわちドップラー効果の存在を明らかにし,さらに46年の論文では,波源と観測者双方が同時に運動する場合へ拡張した。音に関するドップラー効果の検証は,1845年にオランダのバイス・バロットChristoph Hendrik Diederik Buys‐Ballot(1817‐90)がユトレヒトで,トランペッターをのせた機関車を使用して行った。…

【波動】より

…この電磁波によって単位時間,単位面積当りに運ばれるエネルギーの流れはポインティングベクトルで表される。
[ドップラー効果]
 観測者と波源とが互いに近づく向きに運動しているとき,振動数が本来のものより大きく観測され,逆に互いに遠ざかる向きに運動しているときは小さく観測される。この現象も波動に特有のものでドップラー効果と呼ばれる。…

※「ドップラー効果」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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