流体(気体、液体、蒸気)の流れの速さを測定する計器の総称。測定の原理から次の6種類に大別される。
(1)時間と距離から平均速度を求める方式 流れの中に浮きなどの指標物体を入れてその運動から流速を求めるものと、食塩、放射性物質など検出しやすい物質を一時的に注入して、下流の一定距離の地点まで達する時間を測定するものがある。
(2)動圧を利用する方式 航空機の対気速度、風速などの測定に用いるピトー管が代表的で、測定口を流れの上流に向けて測った圧力と側面に向けて測った圧力との差として動圧を求め、ベルヌーイの定理によって流速を算出する。また、動圧を羽根車を使って検出する流速計も多い。
(3)波動の伝播(でんぱ)を利用する方式 ドップラー効果の応用で、流体中の音波の速度が流れの向きと逆向きとで流速の分だけ異なることを利用した超音波流速計が代表的である。流体中の浮遊物などからの反射光のドップラー効果から流速を測るレーザードップラー流速計も、類似の原理に基づいている。
(4)電磁誘導を利用する方式 水などの導電性流体の流速測定に用いられる。電場、磁場、導体運動の間に成り立つファラデーの電磁誘導の法則によって、流れに直角に設置された磁場と発生電圧から流速を求める。
(5)熱の放散を利用する方式 熱線風速計が代表的で、加熱された物体からの熱の放散が、流速と特定の関係にあることを利用している。
(6)渦の発生など流体の周期運動を利用する方式 カルマン渦を利用した流速計が代表的で、渦発生の周波数が流速に比例する原理により、渦を発生させるための物体と渦検出器を用いて周波数を測定して流速を求める。カルマン渦のほかにも物体と流れの相互作用によっておこる周期現象があり、流速の計測に利用されている。
[三井清人]
流体の流れの速さを測る計器。風の速さや水の流れの速さを測定する回転式の速さ計や,航空機,船などにとりつけるピトー管などを応用した速さ計がある。回転式速さ計は,腕の先端にカップをつけたものやプロペラをつけたもので,その単位時間当りの回転数を知って流れの速さを測定する。ピトー管は,流れに対して,開口をもった部分の圧力と静圧との差圧から速度を求めるもので,航空機や高速船に対流体速さ計として使用されている。電磁誘導法則を応用した電磁流速計も船の速さ計として用いられている。これは流線形の断面をもつ柱体ブロック(絶縁体)の中に電磁石を埋め込み,交流励振し,電導性のある流体(水)と船との相対速度に応じた誘起電圧を柱体側面に露出した電極で検出する。このほか,流速計としてはレーザーや超音波を用いて,ドップラー効果を応用したもの,熱線の冷却の程度を測って流速を求める方法などが実用化されている。
執筆者:仙田 修
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流体の速度を測定する計器.静圧と総圧との差を利用したピトー管,流速と冷却効果の関係を利用して,細い線に電流を流して発熱させ,その温度と電気抵抗の関係を利用した熱線流速計,流速と物体の受ける流体抵抗の関係を利用する流体抵抗式流速計,流速と拡散電流の関係を利用する電極反応流速計などがある.[別用語参照]流量計
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…速さ計ともいう。一般に乗物のように移動する物体上で,それ自体の速さを測るものを指すが,流速計やドップラー効果を利用したドップラー速さ計などを含めることもある。
[回転式]
自動車や電車などの場合,車輪の円周を既知とすれば,その回転数を測定することによって,速さが得られる。…
※「流速計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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