フランスの小説家、文明批評家。パリ生まれ。彼の生涯を通じての思想上の問題は、ヨーロッパの、その中心であるフランスのデカダンスをいかにして克服するかということであった。初めはシュルレアリスムの運動に参加したが、この芸術運動が現実変革の運動たらんとして、たとえばアラゴンのようにコミュニズムに傾斜していったのに反し、ドリュはヨーロッパとフランスの蘇生(そせい)の道をファシズムに求めたのであった。政治評論『フランスの測定』(1922)、『ジュネーブかモスクワか』(1928)などで表明された懐疑と低迷は、1936年にファシズムの政党、フランス人民党に入党することによって、いちおうの終止符を打つことになる。この間の精神的彷徨(ほうこう)は、『奇妙な旅』(1933)や『夢見るブルジョワジー』(1937)、さらには、もっとも直截(ちょくせつ)的に自伝風長編小説『ジル』Gilles(1939)に詳しい。しかし彼はフランス人民党の低俗な現実主義にまもなく愛想を尽かすに至る。第二次世界大戦中に『NRF(エヌエルエフ)』誌の編集長として対独協力したことや、その他のファシスト的言動が災いして、45年6月に新政府から逮捕令状が発せられた。令状を機に自らの命を絶った彼の遺稿『秘められた物語』Récit secret(1961)には、あらゆる政治に深く絶望していた彼の姿がうかがわれる。
[若林 眞]
『若林眞著『絶対者の不在』(1973・第三文明社)』▽『河野健二編『ヨーロッパ――1930年代』(1980・岩波書店)』
フランスの小説家,詩人,評論家。第1次大戦に従軍して数度も負傷し,その体験から詩集《審問》(1917)などが生まれた。1921年ころからアラゴンやブルトンらのシュルレアリスムに接近し,同時に現代政治への関心も深めてゆく。政治的エッセー《フランスの測定》(1922),中編小説集《未知なるものへの愁訴》(1924)などが好評をもって迎えられた。ヨーロッパの,特にフランスのデカダンスをいかに克服するかという課題に直面し,アラゴンらがコミュニズムに活路を見いだしたのに対してドリュはファシズムの道を志向した。その間の思想的動揺は小説《夢見るブルジョアジー》(1937),特に直截的には自伝風長編小説《ジルGilles》(1939)において明らかである。第2次大戦中はドイツに協力して,戦時下の《NRF(エヌエルエフ)》誌の編集なども引き受けたが,1945年,対独協力のかどで逮捕令状が発せられたのを機に,自殺を遂げた。
執筆者:若林 真
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…マルロー,サルトルらも同誌を通じて文壇に登場した文学者である。しかしポーランのあとを受けたドリュ・ラ・ロシェルがナチスに協力したため同人の支持を失い,43年6月で休刊を余儀なくされ,53年1月より復刊したが,もはや昔日の面影はない。なお今日フランス屈指の出版社であるガリマール書店は,この雑誌の出版機関をガストン・ガリマールが引き受けて成長させたものである。…
※「ドリュラロシェル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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