ナイマン(Michael Lawrence Nyman)(読み)ないまん(英語表記)Michael Lawrence Nyman

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ナイマン(Michael Lawrence Nyman)
ないまん
Michael Lawrence Nyman
(1944― )

イギリスの音楽学者、作曲家。ロンドン生まれ。ロンドン王立音楽院でチェンバロ、作曲を学び、卒業後ロンドン大学キングズ・カレッジでサーストン・ダートThurston Dart(1921―1971)に音楽理論を学ぶ。1974年に著書『実験音楽――ケージとその後』Experimental Music ; Cage and Beyondを出版、日本でも翻訳された。ナイマンは、1960年代、国際的なモダニズムの風潮を嫌い、1964年に一時作曲することを中断、音楽学者として仕事をすることを好んだ。このころの仕事としては、ルーマニア民謡の採譜やパーセルヘンデルの楽譜校訂などの業績がある。また『スペクテイター』Spectator誌など、いくつかの雑誌で批評も書いている。1968年、同誌に実験音楽の先駆者で作曲家のコーネリアス・カーデューCornelius Cardew(1936―1981)についての記事を執筆。このなかでナイマンは、「ミニマリズム」ということばを使っているが、このことばを音楽に対して用いたのはナイマンが初めてであった。

 1968年、スティーブ・ライヒの『カム・アウト』(1966)をBBC放送で聴き、これをきっかけにふたたびナイマンは作曲を始める。同年ナイマンは、ハリソン・バートウィスルSir Harrison Birtwistle(1934―2022)の『ドラマティック・田園曲』のため歌劇台本『ダウン・バイ・ザ・グリーンウッド』を書く。その後、イギリス、ナショナル・シアターの音楽監督でもあるバートウィスルは、1976年制作の『カンピエロ』のために18世紀ベネチアの歌曲のアレンジをナイマンに依頼する。ナイマンはレベック(中世の弦楽器)や、サックバットトロンボーンのような楽器)、ショームオーボエの前身楽器)、バス・ドラム、サックスなどを集めてカンピエロ・バンドをつくる。上演終了後もナイマンはこのバンドを解散せず、彼自身のピアノとあわせるようになる。その後、モーツァルトの『ドン・ジョバンニ』の16小節をモチーフに用いた『イン・リ・ドン・ジョバンニ』(1977)などをこのバンドのために作曲し、バンドの名前をマイケル・ナイマン・バンドに変更。以降、自作を演奏するバンドとなり、このバンドの、力強いメロディ・ラインの演奏や歯切れよいリズム、ベース・ラインなどが、ナイマン独特の作曲スタイルを代表するものとなった。

 1976年、ブライアン・イーノがプロデュースしたオブスキュア・レーベルからリリースされた『ディケイ・ミュージック』でナイマンの作曲した音楽が発表されて以来、彼の音楽はイギリス以外にも広がって、その名を一躍知られるようになり、自らのバンド以外にもオーケストラ、ア・カペラ・コーラス、弦楽四重奏のために多くの曲を書いている。1989年「フランス革命を祝うフェスティバル」での作曲、アビニョン演劇祭での舞台『テンペスト』の音楽担当が話題をよんだ。

 またナイマンは、1976~1991年、ピーター・グリーナウェイPeter Greenaway(1942― )監督の『英国式庭園殺人事件』(1982)、『ZOO』(1985)、『数に溺(おぼ)れて』(1988)、『コックと泥棒その妻と愛人』(1989)、『ベイビー・オブ・マコン』(1993)など多くの映画音楽を手がけ、これによりナイマンの音楽はさらに広く知られる。そのほかの映画音楽作品にはジェーン・カンピオン監督『ピアノ・レッスン』(1992。カンヌ国際映画祭グランプリ)、フォルカー・シュレンドルフ監督『魔王』(1996)、ニール・ジョーダンNeil Jordan(1950― )監督『ことの終わり』(1999)などがある。また山本耀司(ようじ)(1943― )のファッション・ショーのために曲を創作するなど活動は多岐にわたる。

 そのほかの代表的アルバムには『ワンダーランドWonderland(2000)、『ザ・クレイム』The Claim(2001)、『フィルム・ミュージック~ベスト・オブ・マイケル・ナイマン』(2002)、DVD『短編傑作集 水の協奏曲』(2001)などがある。

[小沼純一]

『椎名亮輔訳『実験音楽――ケージとその後』(1992・水声社)』

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