モダニズム
〘名〙 (modernism)
② 日本の文芸・
美術などで、大正・昭和初期に、欧米の思想・芸術理論・
様式などを積極的に摂取して、現代人としての新しい感覚の表現を
主張した
運動・傾向。
近代主義。モダン派。また、一般に現代の
流行や趣味に合わせようとする傾向をいう。
当世風。〔外来語辞典(1914)〕
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デジタル大辞泉
「モダニズム」の意味・読み・例文・類語
モダニズム(modernism)
1 現代的で新しい感覚・流行を好む傾向。新しがり。現代風。当世風。
2 文学・哲学・美術などで、特に20世紀の初頭に興った反伝統主義の立場に立つ諸傾向の総称。未来派・表現主義・ダダイスムなどを含む。日本では、大正末期から昭和初期にかけての新感覚派・新興芸術派などにみられる、文学・芸術上の一連の運動。近代主義。現代主義。
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知恵蔵
「モダニズム」の解説
モダニズム
19世紀末から20世紀前半にかけて、小説、詩、演劇、絵画、音楽、建築、映画(ただし、主に1920年代以降)、写真、ファッションなどの諸分野において展開された、伝統主義やリアリズムを排して内容、形式、手法の大幅な刷新を企図する運動の、包括的呼称。象徴主義、印象主義、キュビスム、ダダイズム(ダダ)、シュルレアリスムなどの前衛的芸術運動は、すべて広義のモダニズムに含めて考えることができる。その意味でモダニズムは、様式というよりもむしろ様式の模索それ自体であったのかもしれない(M.ブラッドベリ、J.マクファレイン『モダニズム』、1976年)。(1)19世紀的な安定した時間・空間構造の解体、断片化への志向、(2)意識の流れや無意識的記憶など、意識下の世界への着目、(3)方法意識の尖鋭化などが、その全般的な傾向である。それぞれの国、地域、文化圏で、モダニズムがいつまで継続し、どの段階でポストモダニズムに移行していったのかそうでないのか、についても議論が絶えないが、モダニズムのピークは、間違いなく、それが世界的同時性をもって展開された1920年代にあった。記念碑的作品としては、まずマルセル・プルースト『失われた時を求めて』(13〜27年)、ジェームズ・ジョイス『ユリシーズ』(22年)、ウィリアム・フォークナー『響きと怒り』(29年)が、次いでT.S.エリオットの詩集『荒地』(22年)、アーネスト・ヘミングウェイの連作短編集『われらの時代に』(25年)、ジョン・ドス・パソス『マンハッタン乗り換え口』(25年)、ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』(27年)などがあげられる。
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モダニズム
Modernism
一般的には伝統主義に対する近代主義や現代主義を意味するが,狭義には宗教および芸術の分野における用語。宗教の分野では,近代科学の進歩によって伝統的な教義の根本的書き換えが要請されるという信念に基づくすべての見解を含んでいる。プロテスタントでは広く自由主義的な傾向や運動をさすが,狭義には 19世紀に始った科学主義によるローマ・カトリック教会の改革運動 (→近代主義 ) に限定される。芸術分野では広義には芸術理論,表現様式などにおける「現代ぶり」をすべて含む。 18世紀に古代文学に対して現代文学を尊重した人々がモダニストと呼ばれたのもその一例。狭義には第1次世界大戦から 1930年代にかけて勃興したモダン・アートの芸術運動をさし,フォービスム,表現主義,キュビスム,ダダ,シュルレアリスムなどが代表的なもの。文学では象徴主義の流れをくむ純粋詩,心理主義の小説などがそれと目された。
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モダニズム【modernism】
一般的には,伝統社会の社会的・文化的構造からの脱却を企図する精神的傾向を指す語で,〈近代主義〉と訳される。狭義の〈近代主義〉は封建社会から資本主義的市民社会への移行期における,その普遍的な正当化原理として明瞭な時代精神の特徴をもつが,広義には,近代化modernizationなどとともに,この移行にともなう社会・文化諸領域の没主体的な変化それ自体から,伝統社会化したブルジョア的市民文化への対抗という主体的・積極的な主張まで幅広い意味が含まれている。
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世界大百科事典内のモダニズムの言及
【近代建築】より
…過去の様式(歴史的様式)から離脱し,鉄,ガラスなどの新しい建築材料を用いた建築を生み出した19世紀末から20世紀初頭の建築に対しては,一般に〈近代運動Modern Movement〉という呼称が,また,過去の様式にはよらない新しい造形が確立された1920~30年代の建築に対しては〈国際様式International Style〉もしくは〈国際近代International Modern〉という呼称が用いられる場合が多い。 建築運動の中で〈近代〉という言葉が最初に用いられるのは,1860年ロンドンの建築協会の集会における〈近代主義Modernism〉という発言であったといわれ,そこでの,様式的に過去から離反しようとする意識は近代建築の基本的性格でありつづけた。国際様式という概念はグロピウスの著書《国際建築Internationale Architektur》(1925)に触発されて,1932年にニューヨーク近代美術館で開かれた建築展に際して,H.R.ヒッチコックらによって命名されたものである。…
【イギリス美術】より
…後者はイギリスのアール・ヌーボーの代表者の一人で,その病的なまでに繊細で装飾的な線描は,デカダンスと唯美主義的な傾向をよく反映している。
[モダニズムの展開]
20世紀初頭の大陸のモダニズムはイギリス絵画に新たな脱皮をうながした。未来主義に触発されてW.ルイスが1914年に始めた〈ボーティシズム(渦巻主義)〉はその最初のものといえるが,短命に終わった。…
【ワイマール文化】より
…この袋小路を脱する道は閉ざされていたので,閉塞状態の中で窒息した市民意識は自己に幻滅し,己の文化への憎悪,激しい自己解体への願望を生んだ。その文化的な現れが,逆説的な否定的ラディカリズムとしてのモダニズムだった。この傾向は第1次大戦前すでにヨーロッパ全体に顕在化していたが,第1次大戦の結果〈ヨーロッパの没落〉が意識されたドイツでとくに尖鋭化した。…
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