改訂新版 世界大百科事典 「ナマケグマ」の意味・わかりやすい解説
ナマケグマ
sloth bear
Melursus ursinus
長く粗い黒色の毛をもつ,インド,アッサム,スリランカの森林にすむクマ。食肉目クマ科の哺乳類。胸にツキノワグマのそれに似たUあるいはY字形の白色ないし黄色の斑紋がある。発見当初,大きく湾曲してのびる前足のつめが,貧歯目のナマケモノのそれに似ていることから,ナマケモノと類縁関係があるものと考えられ,この名がついた。吻(ふん)が長く,前方に突出させることのできる下唇とあわせて,チューブ状とし,好物のシロアリを吸い取るというクマ類としては一風変わった能力を備えている。体長140~180cm,肩高61~92cm,尾長10~12.5cm,体重91~113kg。雌より雄のほうが大きい。岩穴などを巣として昼間はそのなかで過ごし,夜間活動してシロアリ,昆虫,はちみつ,果実などを食べる。とくにシロアリはもっとも重要な食物で,アリ塚を前足のつめでこわしたあと,前述の方法で吸い取って食べる。吸い取るときにたてる音は200m離れたところからでも聞こえる。出産はインドではおもに6月,スリランカでは一年中行われ,1産1~2子を生む。子は,2~3ヵ月で巣穴を離れ,ほとんど完全に成熟するまでの2~3年間母親とともに過ごす。飼育下での寿命は40年。
→クマ
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報