改訂新版 世界大百科事典 「普通取引」の意味・わかりやすい解説
普通取引 (ふつうとりひき)
証券用語。第2次大戦後の証券取引所における取引(取引所取引)は,戦前の清算取引が禁止されて現物取引1本になった。普通取引はこの現物取引の代名詞であり,最も一般的な取引である。証券取引所の業務規程は内国株券,外国株券,債券類の三つに分けて取引の種類を定めているが,このうち内国株券には,普通取引のほか当日決済取引,特約日決済取引,発行日決済取引がある。これらの取引のなかでは,普通取引が99%以上を占めており,他の取引は例外といってよい。普通取引は,売買契約締結の日から起算して4日目(休業日を除く)の日に決済を行うものであり,4日目決済取引と呼ばれたこともある。ただし配当落日,権利落日等の売買取引については,年末年始を除き,当該売買契約締結の日から起算して5日目(休業日を除く)の日に決済が行われる。当日決済取引は,文字どおり売買契約締結の日に決済を行うものである。ただし当事者が合意すればその翌日(休業日なら順次繰り下げる)に限り決済を繰り延べることができる。特約日決済取引は,普通取引による決済ができないような遠隔地の顧客からの売付委託,その他これに準ずる場合にだけ例外的に認められるものであり,売買契約締結の日から起算して15日以内の契約の日に決済を行う。ただし当事者が合意すれば決済日を繰り上げることができる。発行日決済取引は,未発行の内国株券の取引である。未発行株券の引受人は,その株券の発行前に売却したい場合もあるし,一方これらの取引を放置しておけば投資者に不測の損害を与えることもある。このため,未発行株券の取引を取引所取引として認めたのである。有価証券届出書の効力発生を条件として,権利落日より,当該新株券交付日から起算して10日を経過した日の3日前(休業日を除く)の日まで行われ,取引最終日から起算して4日目(休業日を除く)の日に一括して決済される。
執筆者:堀内 俊男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報