南西太平洋,パプア・ニューギニア領の島。ニューギニア島の北東方,北西から南東に全長320kmにわたって細長く横たわる。面積約8700km2,人口11万8000(2000)。周辺の島々とともにニューアイルランド管区を形成している。管区の主都は北西端にあるカビエン。島の南東部は塊状岩の山塊よりなり,最大幅50kmに及ぶロッセル山脈(最高点2108m)が海岸近くまで迫っている。北西部は平均幅11kmの比較的低地であるが,大きな川はなく,隆起サンゴ石灰岩よりなり,高さ1000m以下のシュライニッツ山脈を形成している。島のかなりの部分,とくに東岸は耕地となっており,ココヤシ,ココアの国内でも重要な産地である。島の南東端はフランス版〈南海泡沫事件〉の舞台となった所で,フランス人マルキ・ド・レイが19世紀後半にポート・ブレトンに植民地をつくったが失敗している。
住民はメラネシア人で,農村部では伝統的な生活が続けられている。北西部一帯では母系の外婚半族が存在し,人々は母系クランに所属している。男たちは結婚すると妻の村に住み,重要なできごとがあると自分の生まれた村に出向き,死後はそこに埋葬される,というのが昔からの慣習である。この地域で興味深いのはマランガンと呼ばれる彫像である。これは死者のために同じクランの成員がつくるもので,人間の形はしているが,グロテスクな様相のもの,死んだ親族を数人複雑に彫り込んだ楯のようなもの,とさまざまの種類がある。この彫像は人が死んだとき,約1年後に作られることもあるし,男子の割礼のとき作られることもある。マランガン儀礼はそうした機会に行われる。マランガンを製作する過程は秘密であり,儀礼が終わると破壊される。儀礼のクライマックスは,仮面と衣装を身につけた壮大な踊りとなり,最後は乱交にまで至る。
執筆者:吉岡 政徳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
パプア・ニューギニア北東部、ビスマーク諸島を構成する島。行政的にはラボンガイ島(ニュー・ハノーバー島)、ムッサウ島などとともに、ニュー・アイルランド州(面積9600平方キロメートル、人口11万8350、2000)を構成する。行政中心地はケビアン。北西から南東に延びる細長い島で、長さ約350キロメートル、最大幅約50キロメートル。最高点は1871メートル。島の大部分では年降水量が3000ミリメートルを超える。南方のニュー・ブリテン島と異なり、火山や地震は少ない。おもな伝統的作物はタロイモとサツマイモ。主産物はコプラ、ココア、ゴム、木材。ケビアンに水産加工工場がある。1616年に来航したオランダ人ルメールは、ニューギニア島の延長と判断し、1700年に来航したイギリス人ダンピアも、ニュー・ブリテン島と陸続きであると判断したが、1767年にイギリス人カートレットが別個の島であることを確認し、命名した。
[谷内 達]
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