かんきつ類の1種で早生のスイートオレンジの代表種。果実は球形で果頂部に重囊よりなるへそ(ネーブル)がある。樹勢は弱く,枝はいくぶん下垂する。病虫害に比較的弱い。寒さにはレモンより強いが,ナツミカンより弱い。花は白色5弁で5月に咲く。雄性不稔。雌性器官もほとんど不全で,無核果が多い。単為結果性がある。種子は白色,多胚。ポルトガル人がブラジルのバイア地方に導入したセレクタオレンジselecta orangeから枝変りによって生じたといわれ,1820年ごろから栽培され始めた。70年,アメリカのワシントンに送られた12本の苗をもとに温室で育苗された。これがネーブルオレンジ品種群の基になったワシントンネーブルである。73年にフロリダ,カリフォルニアに苗が送付され,カリフォルニアでは大産業に発展した。世界のかんきつ栽培地帯で広く栽培される。日本には89年アメリカから初めて導入された。中国には日本から伝播(でんぱ)した。果面の粗滑,果皮の色,熟期の早晩,果実の大きさなどが異なる多くの系統がある。ワシントンネーブルは日本の気象条件下では結実が不安定であったが,白柳(しらやなぎ),吉田,森田,清家(せいけ),大三島など10以上の優良系が発見され,輸入物より優れたものが増産されている。もっぱら生食される。12月に採収され,貯蔵果は4月ごろまで出荷される。へそが小さく,長球形で果面の滑らかなものが一般に品質がよい。剝皮が難しいのでナイフを用いて食す。苦味成分のリモノイドlimonoidsを含むため加工用には適さない。
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
オレンジの一系統であるネーブル系の1品種。
[編集部]
…普通にオレンジというとこのスイートオレンジをさす。さらにバレンシアオレンジ(イラスト)などの普通系オレンジcommon orange,ネーブルオレンジnavel orange,血ミカンblood orange(またはpigmented orange),無酸オレンジsugar orange(またはacidless orange)の4種に分類できる。(2)サワーオレンジC.aurantium L.(英名sour orange) ビターオレンジbitter orangeともいわれる。…
…熟期ではウンシュウミカン(以下ウンシュウ)のように秋から正月ころに食用にされる早生種,ハッサクのように2月から4月ころに食用にされる中生種,ナツミカンのように4月以降に食用にされる晩生種と3群に大別される。しかし,早生種のウンシュウやネーブルオレンジ(以下ネーブル)でも3~4月ころまで貯蔵して出荷されることがある。また同じ品種群内に早・中・晩生種が分化していることもある。…
※「ネーブルオレンジ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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