アオイ科(APG分類:アオイ科)フヨウ属の総称。世界の熱帯、亜熱帯、温帯地方に広く分布し、約200種あり、食用、繊維用、観賞用などとして栽培されている。園芸上でいうハイビスカスは、ブッソウゲ(仏桑華)H. rosa-sinensis L.のほか数種と、これらの複雑な交配により育成された多数の品種をさす。花色や花形が豊富で、白、桃、紫紅、赤、橙(だいだい)、黄色のものや、一重咲き、八重咲きがあり、花径が10~25センチメートルに及ぶものもある。
ブッソウゲはインド洋方面で成立した雑種植物と考えられているが、原産地は不明。今日では熱帯地方で広く観賞用に栽植されており、日本では温室植物とし、普通は鉢植えにされる。常緑低木で高さ2~5メートルに達し、よく分枝する。葉は互生し、広卵形ないし卵形で先はとがり、有柄で長さ9センチメートル内外、不ぞろいの粗い鋸歯(きょし)がある。花は広漏斗(ろうと)形で、新しい枝の上部の葉腋(ようえき)に単生し、長い花柄がある。萼(がく)は筒状で5裂し、花弁は赤色で5枚、雄しべは管状に癒合してその上部に多数の葯(やく)をつける。雌しべは雄しべより長く、先が五つに分かれる。夏から秋によく開花するが、適温であれば一年中花をつける。フウリンブッソウゲ(風鈴仏桑華)H. schizopetalus Hook.f.は東部熱帯アフリカ原産の常緑低木で、交配親の1種である。花は花柄が長くて垂下し、花弁は赤色で、深く細かく裂けて、反り返り、雄しべと雌しべが長く突出して風鈴状にみえる。
栽培は、腐葉土・畑土(はたつち)・砂を混合した土で鉢植えにし、夏季は戸外、冬季は温室内で育てる。越冬は5℃程度でできるが、落葉する。繁殖は挿木および接木(つぎき)による。挿木は温室内であれば周年できる。
[松岡清久 2020年4月17日]
1731年にヨーロッパに導入され、リンネは中国原産と勘違いして、ローサシネンシス(中国のバラ)の種名を与えたが、中国の『閩書南産誌(びんしょなんさんし)』(16世紀)は「外国より渡来し、中国には産せず」と書く。日本には仏桑華(ぶっそうげ)の名で、まず琉球(りゅうきゅう)に伝わり、1614年(慶長19)薩摩(さつま)藩主島津家久はマツリカとともに琉球産の仏桑華を徳川家康に献上した。ハイビスカスの改良の中心地ハワイでは、9種の野生種に、ブッソウゲ、フウリンブッソウゲなどと導入したハイビスカス類が20世紀の初頭から交雑され、5000にも上るといわれる品種が生まれた。ハワイでは州花に指定され、マレーシアの国花、沖縄市の市花でもある。
ハイビスカスティーと称されるハーブ茶は、いわゆるハイビスカスとは異なり、萼(がく)が肥大するアフリカ産のローゼルHibiscus sabdariffa L.である。
[湯浅浩史 2020年4月17日]
ヒビスカスともいう。一般にハイビスカスと呼ばれている植物はブッソウゲを指すが,これはもともと雑種植物であるために変異に富み,近年ハワイでの交雑種を含めて呼ばれるようになり,さらに類似のフヨウ属Hibiscus植物を漠然と指すこともあって,きわめて複雑なアオイ科の園芸種群の総称ともなっている。
ブッソウゲH.rose-sinensis L.(英名rose of China,Chinese hibiscus)は,きわめて変異に富むが,一般的には高さ2~5mに達する熱帯性低木で,全株無毛ときに有毛,葉は広卵形から狭卵形あるいは楕円形で先端はとがる。花は戸外では夏~秋に咲くが,温室では温度が高ければ周年開花する。花は小さいものでは直径5cm,大きいものでは20cmに及び,らっぱ状または杯状に開き,花柱は突出する。花が垂れるもの,横向きのもの,上向きのものなど変化に富む。花色は白,桃,紅,黄,橙黄色などさまざまである。通常,不稔性で結実しないことが多い。日本では南部を除き戸外で越冬できないため,鉢植えとして冬は温室で育てる。鉢植えの土は砂,ピートなどを多く混ぜた軽いものを用い,ときに液肥をあたえる。繁殖は通常,挿木で行い,梅雨期に一年枝を砂にさし,発根後土に植える。大輪種は在来種に接木を行う必要がある。沖縄では庭木,生垣とするが,通常,鉢植えで観賞する。中国では赤花種の花を食用染料としてシソなどと同様に用い,また熱帯アジアでは靴をみがくのに利用するといわれ,shoe flowerの別名がある。沖縄南部では後生花(ごしようか)と呼ばれ,死人の後生の幸福を願って墓地に植栽する習慣がある。ブッソウゲは原産地が不明であるが,インド洋諸島で発生した雑種植物であるとの説もある。
フウリンブッソウゲH.schizopetalus Hook.fil.(英名fringed hibiscus,cut-petaled hibiscus,coral hibiscus)はザンジバル島原産のブッソウゲの近縁種で,花は小さく,長い花柄を有し,風鈴のように垂下して咲く特徴がある。
ヒメブッソウゲMalvaviscuseus orboreus Cav.は別属の植物で,中南米原産の観賞用低木である。花は小さく,直径2~3cm,赤花で,花弁は開かない。この属の植物は,花柱の上部で10本に分岐し,果実は液果を結ぶなどの点がフヨウ属とは異なる。
ハイビスカスと総称されるフヨウ属には他にも草本で観賞用に栽植される種や交配種が多数ある。
→フヨウ →ムクゲ →モミジアオイ
執筆者:立花 吉茂
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