改訂新版 世界大百科事典 「ハウスドルフ」の意味・わかりやすい解説
ハウスドルフ
Felix Housdorff
生没年:1868-1942
ドイツの数学者。ブレスラウ(現,ブロツワフ)でユダヤ系の富裕な商家に生まれた。中学から大学までライプチヒで教育を受けた。天文,光学,数学など広い範囲にわたり興味をもったが,おもな興味は哲学,文学であり,そのエッセーを発表した。1904年教授になったころから集合論を研究し,文学などの文章は消えていった。10年ボン大学で準教授になり,14年に後世にまでもっとも重要な集合論の基礎となる《集合論綱要》を刊行した。35年ユダヤ人追放でボン大学教授を追われ,41年抑留場に入れられ,42年には妻と娘とともに自殺した。彼の業績は解析や代数学にも著しいものがあるが,おもなものはトポロジーや集合論であった。彼以前にM.フレッシェが位相空間の概念を与えていたが,それは解析や幾何に出てくる一般的空間で,ハウスドルフのものとは別である。彼の位相空間,距離空間の研究は最初の概念構成である。ハウスドルフ空間など現在でも重要な定理が多く使われている。
執筆者:小松 醇郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報