ハバナ(読み)はばな(英語表記)Havana

翻訳|Havana

精選版 日本国語大辞典 「ハバナ」の意味・読み・例文・類語

ハバナ

(Havana)
[1] キューバ共和国の首都。キューバ島北西部、メキシコ湾に臨む港湾都市で、タバコ、製糖などの工業も行なわれる。一五一九年スペイン植民地として建設され、一時イギリスが占領。一九〇二年独立とともに首都となった。
[2] 〘名〙 キューバ産の葉巻タバコ
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉上「ハバナの太巻を」

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デジタル大辞泉 「ハバナ」の意味・読み・例文・類語

ハバナ(Havana)

キューバ共和国の首都。キューバ島北西岸にあり、メキシコ湾に面する港湾都市。葉巻きタバコ・サトウキビを輸出し、観光地としても有名。旧市街にはスペイン植民地時代に建造された建物が多く、ハバナ湾に面する四つの要塞とともに、1982年に「ハバナ旧市街とその要塞群」の名称で世界遺産文化遺産)に登録された。人口、行政区215万(2008)。アバナ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハバナ」の意味・わかりやすい解説

ハバナ
はばな
Havana

西インド諸島、キューバの首都。スペイン語ではラ・アバナLa Habanaという。同国北西岸のフロリダ海峡に面するカリブ海最大の港湾都市である。人口220万4333(1996)、213万1937(2019推計)。年平均気温は24.8℃で亜熱帯気候に属する。年降水量は1374.6ミリメートルで、5~11月は湿度が高い。1514年、サン・クリストバル・デ・ラ・アバナとして、D・ベラスケスが入り江の対岸に建設したが、1519年現在の地に移転した。以後、アメリカ大陸におけるスペインの植民地支配の中心および貿易の中継地として発展し、1898年キューバの独立によって首都となった。1959年の革命前は、アメリカの富豪の別荘が建ち並び、多くの観光客を集め不夜城のごとくにぎわう歓楽都市であったが、革命後はキューバ社会主義社会建設の中核として生産都市に生まれ変わった。「大ハバナ都市圏」として、住宅地帯、新工業地帯、大自然公園などの都市計画が実施され都市基盤の整備が図られた。ハバナ港はキューバ最大の貿易港で、同国の輸入の90%を取り扱い、おもに周辺で栽培されるタバコとサトウキビを輸出している。近年は観光業の振興にも力を入れ、ロシア、東ヨーロッパをはじめ、カナダなどからの観光客を集めている。

 17世紀から18世紀初頭にかけて建設された旧市街(ハバナ湾西部の半島部を占める)は、かつて「カリブの女王」あるいは「カリブの真珠」といわれた白い建物の多いスペイン風の美しい町で、現在も植民地時代のおもかげを伝えている。その西方に拡大した新市街は、第一次世界大戦後、アメリカ、キューバの資本家やバチスタ政権の政府要人の高級住宅地として開発されたもので、広い街路や近代高層ビルが建ち並ぶ。両市街の境にある革命広場には独立の父ホセ・マルティの像がある。1960年代に商店やホテルは国営化され、革命前の大邸宅は学校や共同住宅に利用されている。また、バチスタ政権下のコロンビア兵営は教育センターとなっている。ほかに、国境警備隊の兵舎となったモロ要塞(ようさい)、アメリカ大陸で二番目に古い建物であるフエルサ要塞、旧スペイン総督の官邸(現、ハバナ市博物館)、1704年に建てられたハバナ・カテドラルなど歴史的建造物も多い。また、市の南東郊にはキューバをこよなく愛したヘミングウェイの記念館(旧宅)がある。南方14キロメートルにあるホセ・マルティ国際空港には、ロシアのほかメキシコ、スペイン、カナダからの定期便が就航している。なお、旧市街と要塞は1982年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。

[栗原尚子]


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改訂新版 世界大百科事典 「ハバナ」の意味・わかりやすい解説

ハバナ
La Habana

キューバ共和国の首都。英語ではHavana。人口は219万(2005)。キューバ最大の都市であり,政治,経済,文化の中心地。亜熱帯に位置して年間平均気温は24.6℃だが,5~7月には相当暑くなる。ハバナはスペイン人によって初めはキューバ島の南側に建設されたが,1519年までに現在の地に移された。55年に総督庁が置かれ,サンチアゴ・デ・クーバに代わってキューバ島の主都となった。天然の良港をもつハバナは,その後スペイン本国とアメリカ大陸の植民地との間の貿易の中継地として急速に発展した。現在ハバナ港入口にある城塞は,16世紀末から17世紀初めにかけて当時の海賊による襲撃から守るために建てられたものである。ハバナ市は1762年から63年にかけてイギリスに一時占領されたが,その後キューバにおける砂糖産業の発展とともに政治,経済,文化の中心地として繁栄し,スペインの支配から脱して1902年に独立してからはキューバ共和国の首都となった。

 白い建物が多いハバナ市は,昔から〈アンティルの真珠〉と呼ばれるほどその美観で知られてきた。アルマス広場を中心とする旧市街には現在市の博物館となっているカピタン・ヘネラル(総監)の旧官邸や,さまざまな教会,修道院,ハバナ大学など植民地時代の堂々たる建物が残っている。新市街には近代的な建物が建ち並び,革命記念日に100万人もの市民が集まる革命広場があり,郊外には市民の憩いの場である広大なレーニン公園がある。革命前のハバナはカリブ海最大の歓楽地でおおぜいの外国人,とくにアメリカ人観光客が押しかけ,ギャングたちが経営する賭博や売春が盛んに行われていた。しかし革命後それらは廃止されて清潔な都市へと変貌した。政府が地方や農村の開発を積極的に進めているため,貧しい農民が大都市に流入するという現象はここでは見られず,ラテン・アメリカの大都市では唯一の例外といってよいほどこの都市にはスラム街が存在していない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハバナ」の意味・わかりやすい解説

ハバナ
Havana

キューバの首都。スペイン語ではラアバナ La Habana。キューバ島の北西岸,メキシコ湾に臨む港湾都市。 1514年南のカリブ海沿岸のバタバノ付近に建設され,1519年現在地に移転。 16世紀には本国とアメリカの植民地の間を往来するスペイン船の停泊地として発展し,17世紀後半には外敵に備えて要塞化された。その後,1762~63年にはイギリスに占領されたが,奴隷貿易および一般貿易の中継港として,さらに周辺の農業地帯の中心地として砂糖,コーヒー,タバコ,ラム酒の積出港として繁栄。 1898年スペインからの独立とともにキューバの首都となり,政治,経済,文化の中心地となった。 1959年のキューバ革命以後,国の経済政策の変化に伴って,市も大きく変容している。国内最大の工業中心地で,食品,造船,自動車,蒸留酒,繊維,金属などの工業が市内外に集中。たばこ,特に葉巻は有名。革命後は漁業にも力が注がれ,キューバ第1の貿易港としてのほか,漁港としても急速に発展。ハバナ湾のすぐ西に建設された旧市街には植民地時代の面影が残る古い歴史的建築物も多く,ハバナ湾に臨む要塞遺構とともに,1982年世界遺産の文化遺産に登録。その西に広がる新市街は,幅広い道路,多くの公園,近代的建築物をもつ整備された美しい都市である。ハバナ大学 (1728) の所在地。市の中心から南約 15kmにホセマルティ国際空港がある。近郊のマリアナオ,レグラ,グアナバコアなどとともにハバナ大都市圏を形成していたが,1976年の新憲法により,州に相当する特別行政区となった。人口 214万1993(2010)。

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百科事典マイペディア 「ハバナ」の意味・わかりやすい解説

ハバナ

キューバの首都。キューバ島北西部,メキシコ湾に臨む天然の良港を有し,葉巻タバコ,タバコ,砂糖,果物などを輸出する。スペインとアメリカ大陸の植民地を結ぶ中継地として栄え,当時の堂々たる建造物が残っており,〈オールド・ハバナ〉とその要塞群は1982年世界文化遺産に登録された。1519年創設。1898年独立以来キューバの首都。革命前はカリブ海最大の歓楽地として知られた。210万6146人(2012)。
→関連項目キューバ

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ハバナ」の解説

ハバナ
La Habana[スペイン],Havana[英]

キューバ共和国の首都。キューバの征服者ディエゴ・ベラスケスが建設。スペイン植民地時代には,ガレオネス(ガレオン),フロータが本国に帰航するときの集結地だった。そのため,ヨーロッパ他国の私拿捕(しだほ)船に襲われることが多かった。七年戦争中,1762~63年イギリス軍に占領された。1902年キューバ独立後首都となった。

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犬&猫:ペットの品種がわかる事典 「ハバナ」の解説

ハバナ【Havana】

イギリス原産の短毛の猫の品種。セミフォーリン・タイプ。全身がチョコレート色で、ハバナ葉巻の色に似ていたことが名前の由来である。◇ハバナ・ブラウンともいう。

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世界大百科事典(旧版)内のハバナの言及

【カレッジ】より

…他方,研究施設の大型化や高等教育人口の増大による大学の規模の拡大で,個々のカレッジの独立機能の限界があらわになってくる。アメリカで最初のハーバード・カレッジ(現,ハーバード大学)は,ケンブリッジ大学のエマヌエル・カレッジをモデルにして1636年に設立された。つづいて19世紀にかけて小規模のカレッジがアメリカ各地に多数つくられた。…

【ロー・スクール】より

…そして,多くの州では,アメリカ法律家協会American Bar Associationの定める基準に達したロー・スクールを卒業することが,司法試験受験の要件とされている。このような制度を最初に試みたのは,ラングデルChristopher C.Langdellが1870年に法科大学長になって以来のハーバード大学のロー・スクールであり,それが支配的になったのは,1920年代から30年代にかけてのことである。96年現在,アメリカ法律家協会の基準に達していると認定されたロー・スクールの数は,全米で179校である。…

※「ハバナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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