ユリ科(APG分類:キジカクシ科)の常緑多年草。地中をはう根茎の各節から、葉を群生する。葉柄は長く、葉身は長楕円(ちょうだえん)状披針(ひしん)形で長さ40~90センチメートル、深緑色で先はとがる。4月ころ、葉腋(ようえき)に紫褐色花を単生する。花冠は短筒状で径2~5センチメートル、質は厚い。柱頭は大きな傘状となり、内部を隠す。中国から渡来し、庭園に植栽するほか、鉢植え、いけ花として観賞する。根茎は利尿、強心、去痰(きょたん)、強壮薬として用いられる。半日陰でよく育ち、繁殖は早春のころ株分けでする。変種にホシハラン、フイリハランがある。品種としては、縦縞(たてじま)の白斑(はくはん)がある「なかすじ」、中央脈に沿う白斑がある「あけぼの」、葉先が白ぼかしとなる「あまのがわ」、白星斑がある「ほしづきよ」、「星斑」などがある。
[猪股正夫 2019年4月16日]
ハランの名は、大きなランを意味する中国名の馬蘭に由来する。江戸時代にそれを「ばらん」と読み、のちに「はらん」に変化、葉蘭という字があてられた。『花壇地錦抄(かだんちきんしょう)』(1695)は「花は未(いま)だ見ず」と記し、『本草綱目(ほんぞうこうもく)』の馬蘭の記述を引用している。ハランは九州の黒島など、日本にも自生がみられるが、名前の由来などからして、元禄(げんろく)(1688~1704)のころまでに中国から伝来したと推定される。『草木錦葉集(そうもくきんようしゅう)』(1829)には近江(おうみ)葉蘭、星葉蘭、瓜白布入(つまじろふい)りなど6品種があげられ、星葉蘭がいけ花によいとされた。『草木六部耕種法(そうもくろくぶこうしゅほう)』(1833)は栽培法を詳しく載せている。ハランは陰地を好み、庭木の下、手水(ちょうず)鉢の側に植えられ、葉はすしや詰め物などの間仕切りや掻敷(かいしき)に使われる。
[湯浅浩史 2019年4月16日]
ユリ科ハラン属の常緑多年草。中国の中南部原産で古い時代に渡来したとされるが,九州の黒島(鹿児島県)にも自生があるという。日陰でよく育ち,周年,葉が青々として美しいので,庭園に植栽し,生花や料理の添物として利用するほか,根茎が利尿,強心,去痰,強壮薬として利用される。根茎が地中を横にはって伸び,その節から葉柄を直立して葉をつける。葉柄は長く10~20cm,葉身は長さ30~50cmの長楕円状披針形で,幅8~15cm,深緑色で光沢があり,先がとがる。葉は主脈を中心として左右がやや不対称で,若葉は巻く。4~5月に,根茎の節から長さ4cmばかりの花梗を伸ばし,鐘形で褐紫色の花を,上向きに咲かせる。
葉の広狭や質の厚薄と白~淡黄色の斑模様の出方による変化などで,たくさんの園芸品種があり,明治末年編纂の銘鑑には,すでに100余の品種が紹介されている。五色(縞斑),天の川(小型の星斑),旭(葉先白ぼかし),爪白(爪白斑),中筋(中央に淡黄緑色の細条)等が有名である。日陰~半日陰ならば土質は選ばず,5~7年に1回,株分けして移植する。移植は3月上旬が適期。1根茎に3枚以上の葉をつけて切り分け,深さ5cm前後に植えつける。
執筆者:植村 猶行
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