ハラン(読み)はらん

デジタル大辞泉 「ハラン」の意味・読み・例文・類語

ハラン(Harran)

トルコ南東部の都市シャンルウルファの南約40キロメートルに位置する村。古くはメソポタミア北部の中心都市があった場所で、アッシリア粘土板旧約聖書にその名が記された。古代ローマ時代にはカルラエと呼ばれ、当時の遺跡が残っている。また、先端部が丸い円錐状の、日干し煉瓦を用いた伝統的な形式の住居があることで知られる。ハッラーン。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハラン」の意味・わかりやすい解説

ハラン
はらん / 葉蘭
[学] Aspidistra elatior Bl.

ユリ科(APG分類:キジカクシ科)の常緑多年草地中をはう根茎の各節から、葉を群生する。葉柄は長く、葉身は長楕円(ちょうだえん)状披針(ひしん)形で長さ40~90センチメートル、深緑色で先はとがる。4月ころ、葉腋(ようえき)に紫褐色花を単生する。花冠は短筒状で径2~5センチメートル、質は厚い。柱頭は大きな傘状となり、内部を隠す。中国から渡来し、庭園に植栽するほか、鉢植え、いけ花として観賞する。根茎は利尿、強心、去痰(きょたん)、強壮薬として用いられる。半日陰でよく育ち、繁殖は早春のころ株分けでする。変種にホシハラン、フイリハランがある。品種としては、縦縞(たてじま)の白斑(はくはん)がある「なかすじ」、中央脈に沿う白斑がある「あけぼの」、葉先が白ぼかしとなる「あまのがわ」、白星斑がある「ほしづきよ」、「星斑」などがある。

[猪股正夫 2019年4月16日]

文化史

ハランの名は、大きなランを意味する中国名の馬蘭に由来する。江戸時代にそれを「ばらん」と読み、のちに「はらん」に変化、葉蘭という字があてられた。『花壇地錦抄(かだんちきんしょう)』(1695)は「花は未(いま)だ見ず」と記し、『本草綱目(ほんぞうこうもく)』の馬蘭の記述を引用している。ハランは九州の黒島など、日本にも自生がみられるが、名前の由来などからして、元禄(げんろく)(1688~1704)のころまでに中国から伝来したと推定される。『草木錦葉集(そうもくきんようしゅう)』(1829)には近江(おうみ)葉蘭、星葉蘭、瓜白布入(つまじろふい)りなど6品種があげられ、星葉蘭がいけ花によいとされた。『草木六部耕種法(そうもくろくぶこうしゅほう)』(1833)は栽培法を詳しく載せている。ハランは陰地を好み、庭木の下、手水(ちょうず)鉢の側に植えられ、葉はすしや詰め物などの間仕切り掻敷(かいしき)に使われる。

[湯浅浩史 2019年4月16日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ハラン」の意味・わかりやすい解説

ハラン (葉蘭)
cast-iron plant
Aspidistra elatior Bl.

ユリ科ハラン属の常緑多年草。中国の中南部原産で古い時代に渡来したとされるが,九州の黒島(鹿児島県)にも自生があるという。日陰でよく育ち,周年,葉が青々として美しいので,庭園に植栽し,生花や料理の添物として利用するほか,根茎が利尿,強心,去痰,強壮薬として利用される。根茎が地中を横にはって伸び,その節から葉柄を直立して葉をつける。葉柄は長く10~20cm,葉身は長さ30~50cmの長楕円状披針形で,幅8~15cm,深緑色で光沢があり,先がとがる。葉は主脈を中心として左右がやや不対称で,若葉は巻く。4~5月に,根茎の節から長さ4cmばかりの花梗を伸ばし,鐘形で褐紫色の花を,上向きに咲かせる。

 葉の広狭や質の厚薄と白~淡黄色の斑模様の出方による変化などで,たくさんの園芸品種があり,明治末年編纂の銘鑑には,すでに100余の品種が紹介されている。五色(縞斑),天の川(小型の星斑),旭(葉先白ぼかし),爪白(爪白斑),中筋(中央に淡黄緑色の細条)等が有名である。日陰~半日陰ならば土質は選ばず,5~7年に1回,株分けして移植する。移植は3月上旬が適期。1根茎に3枚以上の葉をつけて切り分け,深さ5cm前後に植えつける。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハラン」の意味・わかりやすい解説

ハラン
Haran (Harran)

聖書名ハルラン。現トルコのウルファの南方約 38km,バリク川沿いにあった古代都市。キリキアとアッシリア,アナトリアとバビロンを結ぶ重要な通商路の交差点にあたり,月神シン礼拝の中心地でもあった。アブラハムはウルを出てカナンへ入る前一時ここに滞在した (創世記 11・31~32) 。ローマ時代にはカルラエと呼ばれ,M.クラッススがパルティア人に敗れ (前 53) ,カラカラ帝がパルティア遠征を準備中に暗殺され (217) ,のちの皇帝ガレリウスがササン朝ペルシア軍に敗れた (296) のは,この地においてであった。マルクス・アウレリウス帝からゴルディアヌス3世の時代まではローマの支配下にあり,その後はローマとササン朝の取合いとなったが,639年アラブ人に征服された。

ハラン(葉蘭)
ハラン
Aspidistra elatior; cast-iron plant

ユリ科の常緑の多年草。中国原産で,日本の暖地に観賞用および薬用として古くから栽培されている。長い地下茎をはわせ,長楕円形で長柄をもつ大きな葉を多数つける。葉質は革質で濃緑色。春に,根茎に接して径3~4cmほどの暗紫色で壺形の花を単生する。花被片は8枚。果実は球形の液果。葉は生け花に利用される。根茎は利尿,強心,強壮剤とされ,種子は結核,肋膜炎,解熱,咳止めなどの薬用。葉の斑 (ふ) のあり方などでオモトと同様に多くの園芸品があり,愛好家の収集の対象とされる。

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百科事典マイペディア 「ハラン」の意味・わかりやすい解説

ハラン(葉蘭)【ハラン】

中国原産のユリ科の常緑多年草。観葉植物として庭園に植えられ,生花用ともされる。地下をはう根茎のところどころから,長さ40cm,幅12cm内外の長楕円形で長い柄のある葉を立てる。春,筒状釣鐘形で紫褐色を帯びた,やや肉質の花を1本の花柄に1個,地表すれすれにつける。葉に縞斑(しまふ)や星斑,あるいはぼかし斑などの斑入(ふいり)品種もある。葉は料理の敷物にも使われ,果実と根茎は薬用にされる。

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普及版 字通 「ハラン」の読み・字形・画数・意味

【把】はらん

はばむ。

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