バチカン宮殿内の美術コレクションの総称。バチカン図書館を含めていうこともある。バチカン宮殿は,その全体が,ユリウス2世(在位1503-13)以来の歴代教皇の膨大な美術コレクションが累積して形成された有機的で複合的な大美術館をなしている。それぞれのコレクションや建造物には設立者,収集ごとに名称が付されているが,実際に見学する際の入場口は一つで,システィナ礼拝堂や〈ラファエロの間〉等も含めた連続した観覧コースになっている。(1)ピオ・クレメンティーノ美術館Museo Pio-Clementino 《ラオコオン》《ベルベデーレのアポロン》等の名品を含む古代彫刻の一大コレクションで,クレメンス14世(在位1769-74)とピウス6世(在位1775-99)によって創設される。(2)キアラモンティ美術館Museo Chiaramonti キアラモンティ家出身のピウス7世(在位1800-23)によって整備された古代彫刻の収集。(3)エジプト・エトルリア美術館Musei Gregoriani Egizio e Etrusco グレゴリウス16世(在位1831-46)によって設立されたエジプト美術とエトルリア美術の収集。(4)ラテラノ美術館Musei Lateranensi グレゴリウス16世による古代彫刻・石棺の収集(Museo Profano)と,ピウス9世(在位1846-78)による初期キリスト教時代の石棺収集(Museo Cristiano)からなる。以前ラテラノ宮殿にあったためこの名がある。(5)バチカン絵画館Pinacoteca Vaticana 1932年にピウス11世(在位1922-39)によって建てられたイタリア絵画の大コレクション。収集の母体はトレンティノ条約(1797)によりフランスに譲渡された大量の美術品の返還(1816)作品にさかのぼる。ラファエロの《キリストの変容》やレオナルド・ダ・ビンチの《ヒエロニムス》をはじめルネサンス絵画の優品を数多く含む。
執筆者:森田 義之
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