バデレイ石(読み)ばでれいせき(英語表記)baddeleyite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バデレイ石」の意味・わかりやすい解説

バデレイ石
ばでれいせき
baddeleyite

二酸化ジルコニウム鉱物。ジルコニウムの鉱石鉱物の一つ。純粋な二酸化ジルコニウムZrO2原子炉中性子遮蔽(しゃへい)材として優れた性質を示すが、高温条件では単斜晶系常温相から等軸晶系の高温相に転移し、この際格子がわずかではあるが変形する。そこで遮蔽材としてこの転移を防ぐ必要があったため、カルシウムCa)や希土類元素化合物などの添加物を加えて、常温で等軸相となる化合物が開発され、安定化等軸ジルコニアstabilized cubic zirconiaとして利用されるようになった。これがダイヤモンド類似の外観をもつことから、人工宝石としても価値をもつようになり、現在に至っている。

 バデレイ石自体は、ブラジルでジャクピランガ岩jacupirangiteという一種のアルカリ輝岩の副成分として産し、これから導かれた漂砂鉱床砂鉱)がジルコニウム鉱床として開発されている。ほかにイタリアのベスビオ火山霞石(かすみいし)を含む準長石火山岩中の石灰岩起源捕獲岩中に産する。日本では岡山県岩手県などで石灰岩や苦灰岩の接触帯中に微量を産し、カルシウム、チタン、ジルコニウム複酸化物などと共存するほか、月面玄武岩や隕石(いんせき)中にも産する。命名は最初にスリランカ産のこの鉱物の特異性に着目したイギリス人のバデレイJoseph Baddeleyにちなむ。

[加藤 昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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