ダイヤモンド(読み)だいやもんど(英語表記)diamond

翻訳|diamond

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ダイヤモンド(宝石)
だいやもんど
diamond

もっとも広く世に知られている宝石の一つであると同時に、最高の硬度をもった物質の一つとされている。鉱物学的には非金属元素鉱物に属し、石墨(2H、3Rの2種の多型がある)、ロンズデール石(2H、4Hの2種の多型)、チャオ石などと同質異像関係にある。[加藤 昭]

産状と分布

ダイヤモンドはキンバレー岩と称する地下深所生成の超塩基性岩中に産し、またこれから導かれた砂鉱(漂砂鉱床)、これが固化して堆積(たいせき)岩化したものの中にも産するほか、隕石(いんせき)中に、いわゆる衝撃変成作用の産物として、顕微鏡的なものを産することがある。また、西オーストラリアではランプロ岩lamproiteという橄欖(かんらん)石、金雲母(うんも)、白榴石、リヒター閃石(せんせき)、玻璃(はり)長石、透輝石などからなる特殊な岩石からも発見されている。これらのほか、南アフリカではオレンジ岩orangeiteという橄欖石と金雲母のみを斑晶とする一見火山岩のような岩石中にもみられる。ロシアでは玄武岩中の産出も知られている。カザフスタンや中国で発見された超高圧変成岩(エクロジャイトeclogite)中に含まれる微量のジルコン中の包有物として、微細なダイヤモンドが確認され、変成鉱物としてのダイヤモンドの存在が確認された。日本では愛媛県四国中央市新宮の玄武岩中から微量の存在が確認されている。
 また、いわゆる黒ダイヤ(カルボナドcarbonado)は、河原の礫(れき)あるいは粘土質堆積物中にみいだされるが、これは非常に多孔質でマイクロメートル単位の細粒のダイヤモンドの集合体である。ダイヤモンドが超高圧条件下での生成であれば、このような多孔質のものになるわけはなく、またそれに伴われる希土類元素の特質は、その起源が地下深部ではなく、地殻内であることを暗示している。地殻内程度の低圧条件で空隙(くうげき)に富むダイヤモンドの微結晶集合体が生成されていることは確実であるが、その生成の場の物理、化学的条件を示すような証拠は得られていない。
 一方、ダイヤモンドの生成された年代と母岩のキンバレー岩が生成された年代の相違の可能性も明らかになっている。実際の測定はダイヤモンドの包有物について行われているが、その生成年代は約30~10億年、キンバレー岩のそれは古くてせいぜい10億年という大きな差がある。現在はこのような事実が明らかになった状況で、ダイヤモンドの母岩は、地下から地上まで超高圧を経験しながら、ダイヤモンドという地表で不安定な超高圧鉱物を、転移しないよう保護しながら輸送した特殊な一媒体、ということができる。
 ダイヤモンドの世界における最初の産出はインドで、18世紀ブラジルから発見されるまでは重要な産地であった。1867年南アフリカに大鉱床が発見され、現在もロシアとともに世界の重要な供給源である。これらの地域では、キンバレー岩あるいはこれが分解して生じた土状物質(酸化の進んだイエロー・グラウンドと進んでいないブルー・グラウンドとがある)中や砂鉱が主で、南アフリカ共和国プレミア鉱山から発見された「カリナンCullinan」と命名されたものは、重量3025カラット(605グラム)に達し、世界最大のダイヤモンドとして有名である。一方、ロシアのヤクーツク地方からの発見は1950年代のことである。
 現在までにキンバレー岩はアメリカ、オーストラリア、ミャンマー、中国、カナダなどで知られており、ボルネオ島では砂鉱としてのみ知られている。世界のダイヤモンドの産出量の約90%は工業用に、残り10%が装飾用に供せられており、工業用としては、切削用、研磨材料などの用途がある。これらに用いられるものは良質のものではなく、ボルトbort(黒色系統の色で包有物などを含むもの)やカルボナド(暗灰色多孔質のもの)とよばれるものである。色は本来のものと、包有物によるものとがあり、ほとんどすべての色をもつといわれている。[加藤 昭]

人工ダイヤモンド

ダイヤモンドの人工作成は多くの人によって試みられたが、確実なものは1954年アメリカのゼネラル・エレクトリック社(GE)によって行われた。石墨のチューブ内に種結晶のダイヤモンド、炭素、硫化鉄を入れ、タンタルの金属板で蓋(ふた)をしたカプセルを封入し、約10万気圧、1600℃で数分間処理して得られた。日本では1962年(昭和37)に東芝中央研究所(現・東芝研究開発センター)で、ニッケル‐ゲルマニウム合金を触媒として、アメリカの場合よりも低温低圧条件下で炭素の相転移に成功した。その後のいわゆる薄膜ダイヤモンド(厚さ0.nマイクロメートル)は、高温低圧(数気圧から常圧)で作成されるようになっている。製法はケイ素、炭化ケイ素、人工ダイヤモンドなどを加熱しながら、炭化水素あるいは炭化水素+水素などを主成分とする混合気体を通じ、これらの上にダイヤモンドあるいはロンズデール石の薄膜を生成させるという方法である。また、これら以外に爆薬の爆発や高圧放電によって、瞬間的に起こる高温高圧状態を利用する方法もあるが、生成物の大きさや品質の管理が困難である。2013年の時点で、最大の合成ダイヤモンドは重さ1カラット程度に達しているが、不純物のため着色しており、装飾用として使われるところまではいっていない。[加藤 昭]

天然ダイヤモンドの性状

天然のダイヤモンドは、紫外線の透過率の低高により型と型に区別され、両者の透過率の比は1000対1くらいである。型の紫外線透過率の低い理由は、窒素原子が微細な薄板として存在していることによるものとされ、これは重量にして最高0.25%程度まで含まれるとされる。なお、型のなかには、半導体的特性をもったb型といわれるものが型全体中1000対1くらいの比率で存在する。
 自形は、正八面体、斜方十二面体、立方体およびこれらの聚形(しゅうけい)(複合立体)をなし、一般に凸面の結晶面をもつ。また、正八面体の面を双晶面とする、いわゆるスピネル型双晶をなすこともある。人工ダイヤモンドあるいは天然のものの一部には、樹枝状の結晶が生じていることもあるが、これは比較的急激な結晶生長の産物とされている。
 ダイヤモンド結晶中の包有物をなす鉱物としては、ダイヤモンドより先に生成されたものとして、コース石、ルチル、板チタン石、磁鉄鉱、チタン鉄鉱、含クロム尖晶(せんしょう)石、透輝石、頑火(がんか)輝石、苦土橄欖石、苦礬(くばん)ざくろ石、苦土クロムざくろ石などがあり、後生的なものとしては、石墨、磁硫鉄鉱、ペントランド鉱、黄鉄鉱、石英、赤鉄鉱、白雲母(うんも)、カオリナイト、方解石、セッラ石sellaite(MgF2)、ゼノタイム、針(しん)鉄鉱、蛇紋石などがある。
 カルボナド中の包有物としてしばしば観察されるもののなかに、石英およびカリ長石がある。これらは同時生成物であるとの可能性も論じられており、多孔質の性質と相まって、その生成条件は、通常のダイヤモンドのそれより低圧であろうと推測されている。
 不純物元素として検出されるもののうち、ppm単位で存在するものは、ナトリウム、ニッケル、アルミニウム、窒素などがあり、これらのなかでも窒素は最高2500ppmに達し、前述のように紫外線の吸収度とその含有量との間には、正の相関関係がある。[加藤 昭]

宝石としての品質

宝石としてのダイヤモンドの品質は四つのCによって評価される。すなわち、カラットcarat、色colour、透明さclarity、カットcutである。カラットは重量で、需要の比較的多い1~3カラットの間は、同質のものであれば、価格はそのほぼ二乗に比例している。色は、実際にはほんのわずかの変化によって区別するもので、普通に用いられている呼び方としては、ブルーホワイト(無色透明でわずかに青味を帯びる)、ホワイト(ほとんど無色)、コマーシャルホワイト(わずかに黄色をおびる)、ケイプ(淡黄色)、イエローブラウン(明らかに黄ないし褐色)というようなものがある。透明さとして取り扱われる項目のなかでは、疵(きず)や包有物の存在が最重要の要素である。これは6段階に区別され、実際にはその程度と、研磨した場合に出現する位置によって決定される。最後のカットであるが、ダイヤモンドの90%近くが58面のブリリアント型にカットされている(ブリリアント・カットbrilliant cut)。これには新旧2種類があり、後者はいわゆるテーブル面という平面部が小さくなっている。これらのほか、エメラルド型、マーキーズ型、ペアーズ型、スクエア型などが通常の大きさのものについて行われている。これらのうち、ブリリアント型がもっとも光の分散の度合いが大きくなるが、これが正確にカットされていないと、光の一部が反射されず、低い評価のものとなる。なお、ダイヤモンドは4月の誕生石である。[加藤 昭]
『犬塚直夫著『ダイヤモンド薄膜――非平衡状態からの出発』(1990・共立出版) ▽H・B・ノビコフ編、細見暁・久下修平訳、藤田英一監訳『ダイヤモンドの物性』(1993・オーム社) ▽諏訪恭一著『宝石2 ダイヤモンドとカラーストーンの価値の決まり方』(1997・世界文化社) ▽志村史夫著『ハイテク・ダイヤモンド――半導体ダイヤからフラーレンまで』(講談社ブルーバックス)』

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