日本大百科全書(ニッポニカ) 「バフンウニ」の意味・わかりやすい解説
バフンウニ
ばふんうに / 馬糞海胆
[学] Hemicentrotus pulcherrimus
棘皮(きょくひ)動物門ウニ綱オオバフンウニ科に属する海産動物。棘(とげ)が短く、全体が馬糞(ばふん)のような外観の小形のウニ。本州、四国、九州の沿岸を通じて、ムラサキウニとともにごく普通にみかけられる。ムラサキウニとは生息場所や生態がやや異なり、石の下や岩棚の中に群生して海藻を摂食する。殻径3、4センチメートル、棘長2、3ミリメートルぐらい。棘の色には変異が多いが、全体として暗緑色で、白や淡紅色のものが混在する。裸殻は淡緑色。産卵期は地方によってかなり異なり、12月から翌年4月にわたる。生殖巣を塩蔵加工したものは「雲丹(うに)」の最高級品とされるが、小形種のため収量が少ないという難点をもち、産額はエゾバフンウニやキタムラサキウニに比べて格段に低い。古くから本種の漁の盛んなのは北陸地方や山陰地方で、越前(えちぜん)地方はとくに名高い。これらの地方では採苗器による稚仔(ちし)の採集や人工礁による育成、さらには禁漁期の設定などをして増殖を図っている。漁期は7、8月。食用以外には発生学の研究材料として広く用いられている。東北地方で分布域の重なるエゾバフンウニStrongylocentrotus intermediusとは、同科の別属に分類される。日本沿岸のほか、朝鮮半島と中国沿岸にも分布する。
[重井陸夫]