パウル(Hermann Paul)(読み)ぱうる(英語表記)Hermann Paul

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

パウル(Hermann Paul)
ぱうる
Hermann Paul
(1846―1921)

ドイツの言語学者。ベルリン大学でW・フォン・フンボルトの後任者シュタインタールの指導を受け、1893年以来ミュンヘン大学教授を務める。青年少壮)文法学派の中心人物として活躍した。言語一般の史的変遷原理をドイツ語、ゲルマン語などの豊富な分析データを通して解明しようとした主著『言語史原理』(1880)は、19世紀の、「例外の生じない限り言語は法則的に変化する」とする言語史研究法を集大成したものとして有名である。彼の理論の特色は、〔1〕現代語の研究を基礎として過去の言語発達を追究する、〔2〕個人の心のなかでの作用を重視し、言語発達における類推混同などの現象を積極的に取り上げ、心理学的に解明しようとする、などの点である。しかし「言語学は言語史の研究である」と考えるため、言語の体系そのものへの関心は弱い。1872年ブラウネWilhelm Braune(1850―1926)とともに学術雑誌『ドイツ語史・文学史論究』を創刊したのをはじめ、ドイツ語、ゲルマン語に関する研究も多くあるが、なかでも『ドイツ語辞典』『ドイツ語文法』『中高ドイツ語文法』はドイツ語学における必読名著といえるものである。

[在間 進 2018年7月20日]

『福本喜之助訳『新装版 言語史原理』(講談社学術文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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