ドイツの物理学者。ローレンツキルヒに生まれる。ミュンヘン工科大学、次いでベルリン工科大学で物理学を学び、1939年にベルリン工科大学で博士号を取得した。1944年ゲッティンゲン大学の講師、1950年に同大学の教授になったが、1952年ボン大学に移り、教授および物理学研究所長に就任した。1964年から1967年までヨーロッパ原子核研究機構(CERN(セルン))の核物理部門の責任者を兼任した。なお、1978年(昭和53)に来日し、東京大学で講演を行った。
1950年代に6極磁場を用いて原子線(原子ビーム)を集中させる実験を開始した。そして4個または6個の電極を組み合わせて、イオンを狭い空間(1000分の1ミリメートル程度)に閉じ込めるイオン・トラップ(パウル・トラップ)を完成させた。この装置はイオンの周波数のずれがおこらないようにくふうされ、イオンを長時間保持することにより、安定した周波数を得られるようになった。パウルの開発したイオン捕捉(ほそく)技術は精密な原子分光学の発展に大きな役割を果たし、1989年にノーベル物理学賞を受賞した。ペニング・トラップを発明したデーメルト、分離振動場法を発明したラムゼーも同時に受賞した。
[編集部]
ドイツの言語学者。ベルリン大学でW・フォン・フンボルトの後任者シュタインタールの指導を受け、1893年以来ミュンヘン大学教授を務める。青年(少壮)文法学派の中心人物として活躍した。言語一般の史的変遷の原理をドイツ語、ゲルマン語などの豊富な分析データを通して解明しようとした主著『言語史原理』(1880)は、19世紀の、「例外の生じない限り言語は法則的に変化する」とする言語史研究法を集大成したものとして有名である。彼の理論の特色は、〔1〕現代語の研究を基礎として過去の言語発達を追究する、〔2〕個人の心のなかでの作用を重視し、言語発達における類推、混同などの現象を積極的に取り上げ、心理学的に解明しようとする、などの点である。しかし「言語学は言語史の研究である」と考えるため、言語の体系そのものへの関心は弱い。1872年ブラウネWilhelm Braune(1850―1926)とともに学術雑誌『ドイツ語史・文学史論究』を創刊したのをはじめ、ドイツ語、ゲルマン語に関する研究も多くあるが、なかでも『ドイツ語辞典』『ドイツ語文法』『中高ドイツ語文法』はドイツ語学における必読の名著といえるものである。
[在間 進 2018年7月20日]
『福本喜之助訳『新装版 言語史原理』(講談社学術文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ドイツの言語学者。ベルリン大学,ライプチヒ大学に学び,のちフライブルク大学,ミュンヘン大学教授としてゲルマン語を講じたが,その文献学的な歴史研究は現在のゲルマン語学の基礎を築くものであった。著作としては《ドイツ語辞典》や《ドイツ語文法》(5巻)などのほか,《言語史原理Prinzipien der Sprachgeschichte》(1880)があり,これはK.ブルクマンを中心とする青年文法学派の言語理論を代表する著作であると同時に,今日でも言語の歴史的研究を志す者には必読の書とされている。
執筆者:風間 喜代三
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「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...
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