改訂新版 世界大百科事典 「パレオロクソドン」の意味・わかりやすい解説
パレオロクソドン
Palaeoloxodon
長鼻類ゾウ科の1属。化石ゾウの1グループで,1924年に松本彦七郎により,古代の(パライオス),屈曲またはゆがんだ(ロクソス),歯(オドントス)というギリシア語を合わせて命名された。模式種はインドのナルバダゾウP.namadicusである。ちなみに,アフリカゾウの属名はロクソドンタLoxodontaである。ナルバダゾウのほか,ヨーロッパのアンチクウスゾウP.antiquus,地中海地域の矮小(わいしよう)型のフォーコネリゾウP.falconeriiやマルタゾウP.meltensis,日本のナウマンゾウが含まれる。頭骨の額の部分に横に走る前頭・頭頂隆起が見られ,きばをおさめる切歯骨が左右に大きく開き,臼歯は細長く,その咀嚼(そしやく)面に菱形褶(りようけいしゆう)(ロクソドント・プリカ)とよばれるエナメル質の褶曲が顕著であるのが特徴とされる。この分類群は,約500万年前の鮮新世前期にアフリカに起源し,約200万年以後の更新世にユーラシアの温帯地域に広く分布した。北アメリカ大陸には分布を広げていないが,日本のナウマンゾウのように亜寒帯の環境にも適応したとみられるものがある。人類と共存し,1万年前の更新世末に絶滅している。
→ゾウ
執筆者:亀井 節夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報