ヒナゲシ

百科事典マイペディアの解説

ヒナゲシ

グビジンソウとも。ヨーロッパ原産のケシ科の多年草。高さ約60cmになり,茎や葉にあらい毛があり,葉は不規則に羽状に裂ける。5月ごろ,薄くてしわのある弁が4枚の径7cmほどの花を開く。つぼみは下を向く。花色は緋紅(ひこう)色のほか白,ピンク,絞り等で,八重咲の品種もある。花壇にじかまきする。シャーレーポピーと呼ばれるのは本種の1系統である。アジア北東部原産のシベリアヒナゲシ(アイスランドポピーとも)も園芸品種が多い。元来,多年草であるが,園芸上一年草として扱われている。葉はすべて根出葉で,3〜5月長い花茎の先に黄・だいだい・濃朱紅色等の花をつける。秋まきで移植ができ,切花用に暖地栽培される。日本には同属のリシリヒナゲシがあり,北海道利尻岳の高所にはえる。
→関連項目ケシ(罌粟)

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ヒナゲシ
ひなげし / 雛罌粟
corn poppy
[学]Papaver rhoeas L.

ケシ科の耐寒性一年草。ヒナゲシ類を総称する英語名であるポッピーの名でよばれることが多い。ヨーロッパ原産。ヨーロッパではトウモロコシ畑によく生えるので、コーン・ポッピーの英名がついた。ヒナゲシの仲間にはアジア北東部原産のシベリアヒナゲシやミヤマヒナゲシ、タカネヒナゲシを含め、約20種ある。高さ60~80センチメートル。葉は羽状に裂け、茎、葉ともに毛がある。花色は紅、桃、白色で、一重と八重咲きの品種がある。切り花、花壇用に栽培される。ヨーロッパでは昔から、煎(せん)じて薬用とした。9月下旬~10月に播種(はしゅ)するが、ケシ科特有の直根性で移植を嫌うので、幼苗期に移植するか、直播(じかま)きにするのがよい。性質はじょうぶで、一度植えると毎年こぼれ種で開花する。[横山二郎]

文化史

古代のエジプトでは花飾りに、古代ギリシアでは薬用にされた。ディオスコリデスは、葉や煎(せん)じ汁を湿布にして炎症の治療に、種子を緩下(かんげ)剤に使うと述べている(『薬物誌』)。ヒナゲシの中国名とされる虞美人草(ぐびじんそう)の名の由来には異説があり、『三国志』の当時ヒナゲシは中国になく、舞草(マイハギ)が真の虞美人草であるともいわれる。しかし明(みん)代以降の虞美人草はヒナゲシのことである。日本には江戸時代の前期に伝わり、『訓蒙図彙(きんもうずい)』(1666)に図がある。『花壇地錦抄(ちきんしょう)』(1695)では美人草の名のもとに、くれない八重、一重と白八重、一重の品種があげられ、『草花絵前集』(1699)には八重の図がある。[湯浅浩史]

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世界大百科事典内のヒナゲシの言及

【ケシ(芥子)】より

…また種子は食用となり,ケシ油をとる。 ケシ属Papaver(英名poppy)には約90種あり,大部分が地中海沿岸に分布,少数がアジアとアメリカにあり,日本にも利尻島に黄花のリシリヒナゲシを産する。【森田 竜義】 中国では罌粟,あるいは罌子粟とも書く。…

【植物】より

… 人間は農業生産が進んで生活にゆとりが生まれてくると,植物を美的観賞の対象として見るようになる。例えば,ヨーロッパでは初めヒナゲシは小麦畑に生える雑草として憎まれていたが,19世紀になってJ.ラスキンがその美しさを鼓吹した結果,今ではもっぱらその美しさだけがめでられるようになっている。日本でも同様で,いけばなや四季の花を盛りこんだ歳時記,花暦などは,農業との直接の結びつきからは切り離された伝統の中にあるといってよい。…

※「ヒナゲシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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