ビコ(Giambattista Vico)(読み)びこ(英語表記)Giambattista Vico

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ビコ(Giambattista Vico)
びこ
Giambattista Vico
(1668―1744)

イタリアの哲学者。ナポリの貧しい家庭に生まれる。幼年期頭蓋骨(ずがいこつ)を傷めるほどのけがをし、一生涯心身ともにその結果に悩まされる。ほとんど独学に等しく、とくにチレントの一寒村で家庭教師をしていた時期(1686~1695)に古典、ローマ法、哲学などの書物を熱心に読んだ。1699年ナポリ大学で修辞学の教授となり、さらによい地位を求めたが、一生その職にとどまらなければならなかった。

 デカルトの数学的合理論を一面的な解釈として退け、人間の言語、文学、習慣、宗教、法律など文化的活動全般の権利を回復しようとする。また、デカルトのコギト(われ考える)は、自己の存在は明らかにするが、存在の学へ導くものではないとし、ファーレ(つくる)、すなわち対象を精神のなかで再構成することのなかに、真理の新しい基準をみいだす。この認識論にたち、人間の所産でない自然に関する科学よりも、人間のつくったものとしての歴史にもっぱら関心を向ける。人間の歴史は、人間認識の感覚、表象力、理性の三段階に呼応する三つの周期――原始的で神々の時代、詩的で英雄の時代、市民的で真に人間の時代――の絶えざる循環を通じて発展するものであり(いわゆる「コルシ」「リコルシ」の理論)、しかもこの発展はけっして運命的なものではなく、人間の自由な自己実現だとする。この歴史観は主著『新科学』(1725)のなかで述べられている。

[大谷啓治 2015年10月20日]

『清水純一・米山喜晟訳『世界の名著33 ヴィーコ』(1979・中央公論社)』

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