日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビジコン」の意味・わかりやすい解説
ビジコン
びじこん
vidicon
テレビジョン用撮像管の一種。片仮名表記では「ビディコン」とも書かれる。1950年アメリカRCA社のワイマーPaul K. Weimer(1914―2005)らによって発明された。テレビ撮像管を光電変換機構によって大別すると、光電子放出を利用するものと、光導電現象を利用するものとがあり、ビジコンは光導電現象を用いたものである。小型で寿命が長く、製造コストが安い、などの特長がある反面、残像がある、暗電流が大きい、画質、解像度に劣る、などの難点もある。したがって、フィルム、スライドなどの送像用カメラや工業用テレビジョン(ITV)用カメラ、さらにポータブルカメラなどに広く用いられたが、放送用スタジオカメラとしてはほとんど用いられていない。ターゲット部と電子銃部をガラス管に収めた構造となっている。ターゲットはガラスのフェースプレートの内側に酸化スズSnO2でつくられたネサとよばれる透明導電膜の信号板を付着させ、その上に1~2マイクロメートル程度の厚さの硫化アンチモンSb2S3の光導電膜を蒸着させたものである。電子銃は陰極、第1、第2、第3グリッドからなり、電子ビームの量の制御を行わせるとともに、管の外側にある集束コイルによってビームの加速、集束作用を行わせる。レンズを通して光電面に被写体の像をつくると、光導電膜上には光の強弱に応じた抵抗の変化を生ずる。信号板は、光導電膜を通して電子ビームの当たる面の側に正の電荷を与える。ビームがこれを走査すると、表面電荷が放電され、その放電電流が出力抵抗を通して流れ、信号電圧として取り出されるようになっている。ビジコンは放送スタジオカメラ用に適さなかったが、これにかわって使われたのは、ビジコンの改良型であるプランビコン(1963年オランダのフィリップス社開発)、サチコン(1972年NHKと日立製作所開発)などである。1980年代に電荷結合素子(CCD:charge-coupled device)を使ったCCDイメージセンサーなどの固体撮像素子を用いるカラービデオカメラが実用化されると、ビジコンを含む撮像管は急速にこれに置き換えられ、2014年時点では、特殊用途を除いて使われない。
[木村 敏・金木利之・吉川昭吉郎]