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ビタミンA、カロテンと代謝異常 びたみんえーかろちんとたいしゃいじょう

家庭医学館の解説

びたみんえーかろちんとたいしゃいじょう【ビタミンA、カロテンと代謝異常】

 ビタミンAは、脂肪に溶ける脂溶性(しようせい)ビタミンの一種で、からだの発育、生殖機能の維持、暗順応(あんじゅんのう)(暗くなっても見える目の順応性)、皮膚の保護、感染に対する抵抗力の維持などのはたらきがあります。
 また、カロテンというのは緑黄色野菜(りょくおうしょくやさい)に多く含まれている物質で、小腸の中でビタミンAに変わるものです。
 ビタミンAやカロテンが不足したり過剰になると、以下に述べるようなさまざまな障害が生じます。
◎ビタミンA欠乏症(夜盲症(やもうしょう)、鳥目(とりめ))
 ビタミンA欠乏症とは、ビタミンAを含む食品の摂取が慢性的に不足しておこる状態です。
 暗いところでものが見えにくくなる夜盲症(鳥目)や、生殖作用の維持障害がおこります。これは、女性では卵巣(らんそう)の成長や卵子(らんし)の形成の障害、男性では精子(せいし)の形成の障害というかたちで現われます。
 また、皮膚や粘膜(ねんまく)では角質化(かくしつか)がおこります。角質化とは、表面にある上皮細胞(じょうひさいぼう)の組織に、ケラチンと呼ばれるたんぱく質の一種がふえ、組織がかたく、もろくなるもので、皮膚が荒れてひび割れたり、目の角膜(かくまく)が乾燥して痛んだりします。
 また、気道(きどう)や泌尿器(ひにょうき)の粘膜にも角質化がおこり、細菌やウイルスの感染による気管支炎(きかんしえん)や膀胱炎(ぼうこうえん)などにかかりやすくなります。
 さらに、消化管の粘膜も角質化するため、吐血(とけつ)、下血(げけつ)(血便が出る)、栄養成分の吸収障害もおこって、子どもでは発育障害がおこります。
 そのほか、性腺(せいせん)が萎縮(いしゅく)して不妊症(ふにんしょう)になったり、妊娠中では、胎児(たいじ)の発育にも影響をおよぼし、形態異常がおこりやすくなります。
●原因
 ふつう、ビタミンAだけが不足することはまれで、大部分は、たんぱく質やエネルギー(熱量)などの摂取が全体的に不足する栄養失調や、重い感染症にともなって、ビタミンA欠乏症はおこります。
 また、ビタミンAの貯蔵組織である肝臓に、ビタミンAが十分蓄えられていても、これを全身の組織に運ぶ血液中の物質(A移送たんぱく質)が減少するため、結果的に欠乏症になることもあります。
 このような欠乏症は、大きなけがや重いやけどなどをして、血液中のたんぱく質が急激に減少したときにもおこります。
 なお、ビタミンAには、がんを抑える作用があるので、欠乏状態が長く続くと、呼吸器系、膀胱、結腸(けっちょう)などにがんができやすくなります。
 ビタミンAの1日あたりの所要量は、おとなの男性では2000IU(国際単位)、おとなの女性では1800IUです。
 とくに妊娠中の女性は、妊娠後半期には、所要量よりも200IU、授乳中の場合は、1400IU多く摂取する必要があります。
●予防
 ビタミンAは、肝油(かんゆ)、レバー、ウナギ、バター、卵黄などに多く含まれています。
 また、ニンジン、ホウレンソウ、ニラ、カボチャなどの緑黄色野菜には、カロテンという成分が多く含まれていて、このカロテンが小腸でビタミンAに変化します。
 これらの食品を日常ふつうに食べていれば、ビタミンA欠乏症になることはありません。
◎ビタミンA過剰症
 ビタミンA過剰症は、体内にビタミンAが必要以上に蓄積しておこる状態です。
 誤ってビタミンA剤を多量に服用したり、にきび、がんなどの治療のために、大量に服用し続けたときにおこります。また、妊娠中はビタミンAの必要量が増えるからと、必要以上のビタミンA剤を服用しておこることもあります。
 過剰症には、ビタミンA摂取後12時間前後で発病する急性中毒症と、数か月以上摂取し続けた後に発病する慢性中毒症とがあります。
●症状
 急性中毒症は、脳の内部の圧力が高くなって、吐(は)き気(け)や頭痛がし、意識がもうろうとする(脳圧亢進症状(のうあつこうしんしょうじょう))のが唯一の症状です。
 これに対して、慢性中毒症の症状にはいろいろあります。急性中毒症でおこる脳内の圧力が高まったための症状のほかに、片側の目の視力障害、片側の手足のまひなど、脳腫瘍(のうしゅよう)のときのような症状(偽性脳腫瘍症状(ぎせいのうしゅようしょうじょう))がみられます。
 食欲不振、体重の減少、皮膚の表面がはがれる、四肢(しし)(手足)の痛み、肝臓障害などの症状もみられます。
 また、妊娠初期に大量のビタミンAを摂取した妊婦が、口唇裂(こうしんれつ)など、形態に異常のある子どもを産むことがあります。
 妊娠中のビタミンAの所要量は、妊娠の後半期で1日2000IU(国際単位)ですが、形態異常児を出産した妊婦では、妊娠3~5週に、2万5000~4万IUを毎日摂取したか、または、妊娠19~40日に、15万IUのビタミンAを毎日摂取したことがわかっています。
 また、1日1万IU以上のビタミンAを摂取し続けたときも、形態異常がおこりやすくなることが知られています。これは、妊娠したかどうか気づかないでいる妊娠の初期に、ビタミンAを過剰に摂取することが、きわめて危険だということを示しています。
◎カロテンとは
 カロテンは、緑黄色野菜に多く含まれています。小腸でビタミンAに変わりますので、プロビタミンA(ビタミンAの前駆体(ぜんくたい))ともいいます。
 ビタミンAになるカロテンには、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)という3種のカロテンのほか、クリプトキサンチンというものがあります。
 βカロテンは、プロビタミンAとして、もっとも有効なカロテンですが、それでもビタミンAとしての効果は、同じ重さのビタミンA(レチノール)の6分の1しかありません。これは、小腸ですべてビタミンAに変わるわけではないからです。
 そのほかのカロテンは、ビタミンAとしては、βカロテンの2分の1の効果しかないとされています。
 しかし、カロテンは、ビタミンAに変わるだけではなく、一部はそのままのかたちで吸収され、独自の効果を発揮します。たとえば、βカロテンは、肺がんや胃がんの発生を抑えることがわかっています。喫煙者において、肺がんの発生を抑える効果は、とくに強いものがあります。
 αカロテンにも、βカロテンと同等以上の発がん抑制効果があるという研究報告もあります。
 このほかにも、がんなどをおこす有害な活性酸素(かっせいさんそ)を消したり、同様に、強い酸化力のあるフリーラジカル(活性酸素もフリーラジカルの一種)をとらえたり、免疫力を強めるなどのはたらきがあります。
 カロテンを食品から摂取した場合には過剰症はありませんが、βカロテン剤を過剰に摂取した場合、喫煙者で逆に肺がんの発生がふえたという研究報告もあり、注意が必要です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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