手形や短期国債の売買,もしくは売買の仲介を行う業者をいう。実際にはロンドンの手形割引商会すなわちディスカウント・ハウス(手形割引商社もしくは手形割引業者と訳されることもある)を指すことが多い。ブローカーという言葉は元来,たんなる売買仲介業者を指すが,歴史上の事情から,自己の責任で手形を買う割引商会をビル・ブローカーと呼ぶことになった。このほかにランニング・ブローカーと呼ばれるたんなる仲介業者を含む。19世紀の初めごろまでは,ブローカーは資金を必要とする工業地域の手形を集めて,余資のある農業地域の銀行に売却し,手数料を得ていた。19世紀の後半には支店銀行制の発展に伴って,この業務は不要化していったが,一部のブローカーはすでに銀行からコール・マネーを取り入れて手形を割り引く業務に転進していた(割引商会化)。内国手形は衰退していったので,おもな投資対象は内国手形と逆に増加しつつあったロンドンあて貿易手形であった。第1次大戦以後は貿易手形の使用も減少したが,他方でイギリス政府発行の大蔵省証券(TB)が急増したので,割引商会はこの証券をおもな投資対象とした。割引商会は市中銀行から(1971年以降は,1950年代後半から伝統市場とは別に急速に発展した新しい短期市場である第二市場金融機関からも)コール・マネーを取り入れ(貨幣市場),これをおもな原資としてTB等に投資し(割引市場),両者の利ざやを稼いでいる。割引商会はロンドン割引市場協会を結成しており,会員は1974年以降11社である。イングランド銀行は伝統的に市中銀行と直接には取引をせず,割引商会とだけ取引を行うので,同行と割引商会との間のTB等の売買が正統的な金融政策の最も重要な経路となっており,このために割引商会は従来から,その資力には似つかわしくないほどの注目を浴びてきたのである。
執筆者:一ノ瀬 篤
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手形仲買人。今日では割引商社discount houseとよばれ、ロンドン割引市場・貨幣市場の重要な構成主体である。銀行などからコール資金を取り入れ、それで商業手形、地方自治体債券、大蔵省証券などを保有する。両者の間のマージンが収益の源泉である。金融逼迫(ひっぱく)時には、銀行などがコールを回収することになるが、ビル・ブローカーは保有する商業手形などをイングランド銀行で再割引し、その資金でコールを返済する。すなわち、イングランド銀行の「最終の貸し手」としての機能はおもに割引商社を通じて果たされるのであって、イングランド銀行から貨幣市場(割引商社)を通じて銀行組織へと資金が供給される。
なお、第二次世界大戦前の日本にもビル・ブローカーとよばれるものが存在したが、手形割引市場が未発達であったから、その実質はコールの仲介業者であった。
[鈴木芳徳]
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…貨幣市場の主軸は手形割引市場であり,その担い手はまずディスカウント・ハウス(割引商会)である。彼らは19世紀初頭のビル・ブローカー(手形仲買人)に起源をもち,初めは単なる手形のブローカーであったが,1830年代ころから自己の勘定で内外手形を買い入れるディーラーに成長し,割引商会と呼ばれるようになった。オーバレンド・ガーニー商会などが有名であるが,現在ではロンドン割引市場協会London Discount Market Association加盟の少数有力会社がシンジケートを形成している。…
※「ビルブローカー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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