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ピカレスク小説 ぴかれすくしょうせつpicaresque novel

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知恵蔵の解説

ピカレスク小説

社会の下層に位置する主人公が、一人称で自己の遍歴や冒険を物語る小説形式。挿話を重ねていく構造を持ち、時間、空間がパノラマ式に変転していくのが特徴。ピカレスクとは、「悪党」「ごろつき」の意のスペイン語ピカロ(picaro)より。最初のピカレスク小説は、作者不明の『ラサリリョ・デ・トルメスの生涯』(1554年)であるとされる。ピカレスク小説はまず、トマス・ナッシュ『不運な旅人』(1594年)によってイギリスに導入され、以後、16世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパ全土に広がり、ドイツグリンメルスハウゼン阿呆物語』(1669年)、フランスのアラン・ルネ・ルサージュ『ジル・ブラース物語』(1715〜35年)、イギリスのダニエルデフォー『モル・フランダーズ』(1722年)などを生んだ。19世紀以降、ピカレスク小説は、ことにアメリカ小説の構成原理として有効に働き、マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』(1885年)から、J.D.サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』(1951年)まで、数々の秀作を世に送った。日本において、ピカレスク小説がおおむね大衆文学の領域にとどまっているのは、日本人ヒーローに求める条件たる倫理や知性が、そもそもピカロの持ち合わせぬものであるからなのだろう。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
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デジタル大辞泉の解説

ピカレスク‐しょうせつ〔‐セウセツ〕【ピカレスク小説】

《ピカレスクは、picaresque》⇒悪漢小説(あっかんしょうせつ)

出典|小学館
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百科事典マイペディアの解説

ピカレスク小説【ピカレスクしょうせつ】

悪者(わるもの)小説

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
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とっさの日本語便利帳の解説

ピカレスク小説

悪漢小説。一六世紀のスペインの小説『ラサリーリョ・デ・トルメス』(作者不明)を起源とする写実主義小説の一様式で、悪漢を主人公とし、特に一八世紀の英国で流行した。

出典|(株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」
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大辞林 第三版の解説

ピカレスクしょうせつ【ピカレスク小説】

〔picaresque novelスペイン picaro(ならずもの・悪漢)に由来〕
一六世紀半ば、スペインにおこり、ヨーロッパ中に流行した小説の様式。ならず者の冒険を描き、辛辣しんらつに社会を風刺する。悪漢小説。悪者小説。

出典|三省堂
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ピカレスク小説
ピカレスクしょうせつ

悪者小説」のページをご覧ください。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ピカレスク小説
ぴかれすくしょうせつ
novela picarescaスペイン語

ピカロpcaro(あまり暴力的ではなく、ときにはユーモアも備えた、ずる賢い、ぺてん師的な小悪党)を主人公にした小説で、一般に悪漢小説とか悪者(わるもの)小説と訳されている。小説のジャンルとしては騎士道小説や牧人小説ほど、はっきりした性格を備えていないが、多くのピカレスク小説に共通してみられる点としては、虚構の自伝形式をとり、下層階級出身の主人公が次々と事件に出会い、異なる階級の人たちに接するという形式があげられる。また内容的には、主人公のピカロがつねに飢えにさいなまれているアンチ・ヒーローで、作品中に高尚な感情――とくに愛――についての言及がないことが大きな特色となっている。
 一般にピカレスク小説の最初の作品と考えられているのは、16世紀なかばにスペインで出版された作者不詳の『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』(1554)であり、この作品には前記の特徴がすべて備わっている。しかし、スペインでピカレスク小説が流行するきっかけをつくったのは、マテオ・アレマンの『グスマン・デ・アルファラーチェの生涯』(1599、1604)で、この小説が発表されたあとの半世紀間には、多数のピカレスク小説が出版された。そしてそれらは、なんらかの意味で教訓的であるのを特色としている。一方、虚構の自伝体でエピソードを語り継ぐというその形式は、他国の作家たちにも好んで受け入れられ、グリンメルスハウゼン『阿呆(あほう)物語』(1669)、デフォー『モル・フランダーズ』(1722)、ル・サージュ『ジル・ブラース物語』(1715~35)といったピカレスク小説の傑作を生み出した。ピカレスク小説が下層階級の出身者を主人公にしたことから、小説のなかに写実的な要素が持ち込まれるようになったのは確かで、これが近代小説の誕生に大きく寄与していることはいうまでもないだろう。[桑名一博]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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