ファーブル(寓話集)(読み)ふぁーぶる(英語表記)les Fables

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファーブル(寓話集)」の意味・わかりやすい解説

ファーブル(寓話集)
ふぁーぶる
les Fables

フランスの詩人ラ・フォンテーヌの『寓話(ぐうわ)集』。三部、12書からなり、1668、78、94年発表。主としてイソップの動物寓話を美しいフランス語に移し換えたもので、ほかに自作の詩や、コントや、哲学談義を述べた詩もある。第二集には、インドの寓話作家ピルペイPilpayの寓話の改作も加わって、もっとも力が充実した詩が多い。全体はイソップ寓話と同じ処世哲学の教訓の詩がおもであるが、詩人は寓話詩のなかで、貪欲(どんよく)、エゴイズムなど人間の生来悪癖を指摘したり、ルイ14世の宮廷世相を風刺したりしている。彼はむしろ短い詩のなかで、人生についての自由な談義を楽しんでいる。その自然で清澄な詩句は完璧(かんぺき)な詩の技巧の作品であるといえる。

河合 亨]

『市原豊太訳『ラ・フォンテーヌ寓話』全二巻(1951・白水社)』

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