フィブリノゲン

デジタル大辞泉 「フィブリノゲン」の意味・読み・例文・類語

フィブリノゲン(fibrinogen)

《「フィブリノーゲン」とも》血漿けっしょう中のたんぱく質の一。主に肝臓でつくられる。血液凝固の第一因子で、トロンビンによって限定的な分解を受け、フィブリンとなる。線維素原

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四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「フィブリノゲン」の解説

フィブリノゲン

基準値

200~400mg/dℓ

フィブリノゲンとは

 血液凝固因子のひとつ(第Ⅰ因子)で、血液凝固メカニズムの最終段階でフィブリンという水に溶けない網状の線維素となり、血液を固める働きをする。


フィブリノゲンが低下すると血液が固まりにくくなる

フィブリノゲンは血液凝固の第Ⅰ因子で、急性相反応物質です。低値になると出血しやすくなり、高値になると血栓ができやすくなります。

出血傾向、DIC、肝機能障害で低値に

 フィブリノゲン(血液凝固第Ⅰ因子→参照)も、血液の凝固の異常を調べる検査です。

 フィブリノゲンは、血液凝固の最終段階で網状の不溶性物質フィブリンとなり、血球血小板が集まってできた塊(血栓)のすき間を埋めて、血液成分がそこから漏れ出ないようにしています。このため、フィブリノゲンが低下すると血液が固まりにくくなり、止血されにくくなります(出血傾向)。

 例えば、全身のいたるところで血液が凝固する病気として、播種はしゅ性血管内凝固症候群(DIC)があります。これは、悪性腫瘍や重症細菌感染症、白血病などから、二次的に発症する病態です。全身で血液凝固がおこるため、凝固因子が消耗してフィブリノゲンも低下し、出血傾向が出現してきます。

 フィブリノゲンはまた、肝機能検査としても用いられます。これは、フィブリノゲンが肝臓で合成されるためで、肝硬変肝臓がんで肝臓の合成能力が低下すると、低値になります。

血栓症、感染症、急性心筋梗塞で高値に

 この検査は、感染症や急性心筋梗塞こうそくなどの疑いがあるときにも行います。フィブリノゲンは、体内に炎症組織の変性が生じると、5~6時間後に血液中に増加し、高値となるからです。

 血液凝固因子であるフィブリノゲンが何らかの原因で増加すると、体のいろいろなところで血栓ができやすくなります。

検査法による誤差もある

 検査は、フィブリノゲンをフィブリンとして重さを測定する方法と、トロンビンを加えてフィブリノゲンがフィブリンとなる時間を測定するトロンビン法とが用いられています。

 前者は、採血に難渋した検体や古い検体では偽低値になることがあります。後者では、フィブリノゲンに分子異常があると、トロンビン時間が延長して偽低値になります。

症状が落ち着いたら再検査

 フィブリノゲンは、急性の炎症や組織の破壊があるときに、血液中に出現する物質(急性相反応そうはんのう物質という)であるため、症状の落ち着いた時期に再検査する必要があります。また、100mg/dℓ以下の場合は低フィブリノゲン血症として注意し、50mg/dℓ以下では出血する危険があります。

播種性血管内凝固症候群

・紫斑

・下血

・注射部位の止血困難

・乏尿

・ショック

 

悪性腫瘍、重症細菌感染症、白血病、膠原病など

疑われるおもな病気などは

◆高値→妊娠、感染症、急性心筋梗塞など

◆低値→肝機能障害(肝硬変、肝臓がん)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、脳梗塞、急性心筋梗塞後、無(低)フィブリノゲン血症など

医師が使う一般用語
「フィブリノゲン」あるいは「フィブリノーゲン」

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

知恵蔵 「フィブリノゲン」の解説

フィブリノゲン

血液凝固因子。肝臓で作られるたんぱく質で、糊状になって血液を固まらせて出血を止める。産婦人科や外科で使われた製剤は、薬害エイズを起こした血液製剤同様、1964年から87年まで、原料は輸入血液で非加熱だった。87年、青森県の肝炎集団発生でメーカーミドリ十字(当時)は回収、厚生省(当時)に報告したが、2001年に厚生労働省は再調査を指示。02年3月、ミドリ十字の併合会社三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)は、患者約28万人のうち1万600人がC型肝炎(ウイルス肝炎)に感染したと報告した。患者は各地で国と製薬企業を相手に「薬害C型肝炎訴訟」を提起、2006年6月、大阪地裁は13人中9人の訴えを認める初めての判決を出した。

(田辺功 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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