改訂新版 世界大百科事典 「フタオチョウ」の意味・わかりやすい解説
フタオチョウ (双尾蝶)
Polyura eudamippus
鱗翅目タテハチョウ科の昆虫。インド北部からマレー半島,中国西部などに分布し,日本では沖縄本島中部以北の特産。やや大型のチョウで開張は7~8cm。和名は後翅に2本の尾状突起があることによる。翅は淡黄色の地に黒い斑紋があり,裏面には銀白色の光沢があって美しい。雌は雄よりやや大型,翅が丸みを帯びる。3月末から4月にかけて越冬さなぎが羽化し,さらに6~7月,9~10月と年3回発生するが,年2回の場合もある。沖縄では丘陵にも集落付近にも見られるが,高いところを雄壮に飛ぶ習性がある。成虫は樹液や腐熟果に集まる。幼虫の食樹はヤエヤマネコノチチ(クロウメモドキ科)が主である。卵は日本産のチョウ類中最大級で,アゲハなどの卵とはまったく逆に,上面が平らで下が丸い。幼虫は頭部に4本の角がある。さなぎは緑色で光沢がなく,マダラチョウ類に似て丸く太く,突起もない。
フタオチョウ類は元来,亜熱帯から熱帯性のチョウで,Polyura属とCharaxes属に分けられているが,卵,幼虫,さなぎは両属とも同じ形態をしている。前者はインド以東に分布するが,種類数は多くない。後者はおもにアフリカの,とくにサバンナによく適応し,色彩,形,大きさの変化に富む多数の種がすむ。約180種のうち,120種ほどがアフリカとその周辺に分布するが,一部は東南アジアに達している。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報