日本大百科全書(ニッポニカ) 「フノリ」の意味・わかりやすい解説
フノリ
ふのり / 布海苔
海蘿
鹿角菜
[学] Gloiopeltis
紅藻植物、フノリ科フノリ属の海藻をいう。おもな種類はマフノリG. tenax、フクロフノリG. furcata、ハナフノリG. complanataの3種で、いずれも外海に面する岩盤の潮間帯上部から中部に群落をつくる赤褐色の一年生海藻である。冬から春にかけて繁茂し、初夏に成熟して胞子をつくる。
マフノリは、体が円柱状かやや平たく、数回叉(さ)状に枝分れし、高さ10~20センチメートルの扇形となる。枝は上方に細く、実質で、内部は糸状細胞と粘質で満たされる。本州中部以南に分布するが、とくに九州西岸に多い。ホンフノリともよばれ、糊料(こりょう)や食用としての品質は最上である。フクロフノリは、体が円柱状で、やや不規則に枝分れし、高さ5~15センチメートルになるが、体形は生育地によって変化に富む。枝は中空で、ところどころにくびれがある。千島列島から九州まで広く分布し、九州などではブツともよばれている。生産量はフノリ属ではもっとも多く、布糊(ふのり)とされるほか、ノゲノリとよんで食用にもする。ハナフノリは、体が小形で、高さ1~4センチメートルになる。不規則に小枝を密生し、先端の枝は櫛(くし)の歯状に並ぶ。東北地方以南に分布する。小形であるため、用途的には重視されていない。
フノリ属の海藻は、さらしたものを板状に抄(す)いて製品(布糊)とし、古くから絹や人絹織物などの仕上げ糊に用いられてきたが、化学繊維や合成糊料ができてからは需要が減少している。このほか、フノリには接着剤、陶磁器用絵の具、漆食(しっくい)の糊料などの用途がある。なお、最近では相当量の原藻や加工品が韓国から輸入されている。
[喜田和四郎]
食品
食用の歴史は古く、すでに平安時代に布乃利の名が出ている。紅色や淡桃色、褐色に変色した乾燥品で市販されている場合と、多量の塩を加えた塩蔵品となっている場合とがある。乾燥品は水にもどして、塩蔵品は数回水洗いし、十分塩出ししてから調理する。色の美しいものは刺身のつまや海藻サラダ用によい。熱いみそ汁に入れると、汁中に特有のとろみが出て、寒中には身体が暖まるといって愛好されている。また、とろみのある中華風スープに利用すれば、かたくり粉を入れる必要はなく、フノリ特有の風味が味わえる。
[新崎盛敏]