ブラジル高原(読み)ブラジルこうげん(その他表記)Planalto do Brasil

改訂新版 世界大百科事典 「ブラジル高原」の意味・わかりやすい解説

ブラジル高原 (ブラジルこうげん)
Planalto do Brasil

ブラジルアマゾン平原の南に広がる一連の高原ないしは高位台地と呼ばれる地域で,平均標高は約1000m。英語でBrazilian Highlands。先カンブリア時代の岩石からなる地層は,ほぼ水平に重なってできている。この地層は形成以来現在までの数億年の間に褶曲や火山活動などの地殻変動を受けたことのない,安定した地盤の地域である。高原中の最高峰は,エスピリト・サント州の主都ビトリアの西方,ミナス・ジェライス州との州境にそびえるバンデイラBandeira山(2890m)で,この周辺にはクルゼイロCruzeiro山(2861m),クリスタルCristal山(2798m),カルカドCalcado山(2766m)など標高2700mを超す山々が集中している。日本の山のように急峻な山容ではなく,波浪状のなだらかな起伏のある高原を思わせる山地である。しかし,これらの高原の末端は急峻な地形で,山脈状になり,セラserraと呼ばれている。また,両側が急峻な地形の場合にはシャパーダchapada(卓状地)と名づけられている。ブラジル高原上には,このようなセラやシャパーダと呼ばれるいくつかの山脈状の地形がある。北東部のアポジApodi山脈,アラリペAraripe山脈のほか,マト・グロッソ州とゴイアス州バイア州の西部にもシャパーダが多い。またリオ・デ・ジャネイロからサン・パウロとサントスの間へ連なる海岸山脈Serra do Marや,その内陸にあって南パライバParaiba do Sul川に面するマンティケイラMantiqueira山脈は,ともにセラである。さらに内陸にあるジェラル・デ・ゴイアスGeral de Goiás山脈,サン・フランシスコ川の東側にあるエスピニャソEspinhaço山脈,その東側の大西洋岸にあるアイモレスAimorés山脈もセラである。

 シャパーダやセラからなるブラジル高原の北西部への延長が,標高400~900mの波浪状のマト・グロッソMato Grosso高原である。この高原は,先カンブリア時代の結晶片岩が浸食を受けて削られ,そこに古生代中生代の地層が堆積し,さらにその後浸食された起伏の少ない高地であり,ところどころにシャパーダが残っている。
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百科事典マイペディア 「ブラジル高原」の意味・わかりやすい解説

ブラジル高原【ブラジルこうげん】

南米,ブラジルのアマゾン平原以南,同国中〜南部の広大な地域を占める高原。平均標高1000m。準平原化された高原と古い水平な地層からなる台地であるが,最高峰バンデイラ山(2890m)の周辺には2700mを超す山々が集中しており,それらの高原の末端は急峻な地形で,山脈状を呈してセラと呼ばれる。サバンナ気候を示し,南部の低木をまじえた地域はカンポと呼ばれ,北西部にはセラードという草原,北東部はカーチンガという半乾燥地帯が広がる。高原南部の肥沃テラ・ロッサ地域を中心にコーヒー栽培が盛ん。高原の北西部への延長がマト・グロッソ高原である。
→関連項目アマゾニアギアナ高地ブラジル南アメリカ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブラジル高原」の意味・わかりやすい解説

ブラジル高原
ブラジルこうげん
Planalto Brasileiro

南アメリカ中部東寄りに広がる古期の岩石から成る広大な地域。ブラジル楯状地とも呼ばれ,ブラジルの中部から南部にかけての大部分とボリビア,パラグアイ,ウルグアイの各一部を含む。狭義にはブラジルの南東部,ミナスジェライス,ゴイアス,サンパウロの3州にまたがって広がる高原地帯をさし,ブラジルでは中央高原 Planalto Centralと呼ぶ。広義のブラジル高原は,約 3000kmに及ぶブラジルの南東海岸を一辺とする三角形の傾動地塊で,急崖をなして大西洋にのぞむ沿岸部から北のアマゾン低地,西のパラナ=パラグアイ低地に向ってゆるやかに傾斜する。基盤は先カンブリア時代の花崗岩,片麻岩,結晶片岩,ケイ岩などから成るが,大部分削剥され,その上に古生代以降の地層が重なってゆるやかに起伏する丘陵や,中央高原,マトグロッソ高原などをつくっている。しかし沿岸部には古期の岩石から成るエスピニャソ,マンティケイラなどの山脈やバンデイラ山 (2890m) をはじめとする高峰が残っており,これらの部分に鉄,マンガン,金などの鉱物資源が豊かに埋蔵されている。概して南部は気候条件がよく,土壌も肥沃で,農業の生産性が高いが,内陸部は半乾燥地帯が多く,牧畜に利用されるほかは大部分未開発。中央高原は標高 500~1000mの台地状の高原地帯で,アマゾン,ラプラタ両水系の分水界の一部をなしており,中央部にブラジルの首都ブラジリアが立地する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラジル高原」の意味・わかりやすい解説

ブラジル高原
ぶらじるこうげん
Planalto Brasileiro

ブラジルの国土の南部3分の2余りを占めて広がる高原。南東部の大西洋沿いの部分がもっとも高く、マンティケイラ山脈など2000メートル級の山岳があるが、他の部分はおおむね1000メートル以下の高原や台地をなす。ブラジル楯状地(たてじょうち)とよばれる安定地塊で、先カンブリア時代の変成岩や深成岩よりなるが、これらの上に古生代以降の地層がほぼ水平に堆積(たいせき)している地域(パルナイーバ堆積盆地、パラナ堆積盆地など)も多い。高原の中央部の大部分は4~6か月の乾期をもつサバナ気候のもとで、セラードとよぶサバナ原野が広がり、北東部は熱帯半乾燥気候下の有刺灌木(かんぼく)林、南部は亜熱帯湿潤気候下の森林が広がっている。

[松本栄次]

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世界大百科事典(旧版)内のブラジル高原の言及

【アメリカ】より

…チチカカ湖を含むペルー,ボリビア地域ではアンデス山脈の幅は約600kmにも達し,広い高原を含んでいる。 北アメリカ・南アメリカ大陸の東部にはローレンシア楯状地,ギアナ高地,ブラジル高原などの古い山地があり,その基盤は古い結晶岩や結晶片岩で構成されている。ローレンシア楯状地は北アメリカ大陸北部のラブラドルからハドソン湾を囲むように広がり,五大湖北部をへて北極海諸島に至る。…

※「ブラジル高原」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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