堅い炭酸塩質の岩石(石灰岩,苦灰岩など)から生成した赤褐色の土壌。テラ・ロッサという名称は,地中海地方の〈赤い土〉を意味するイタリア語に由来している。土壌分類学的にはロードゼラルフRhodoxeralf(アメリカ)あるいはクロミック・ルビソルChromic Luvisol(FAO/UNESCO)ともいわれる。炭酸塩が溶解されたあとに残された鉄やアルミニウムの水酸化物および粘土からなり,一般に腐植に乏しく炭酸カルシウムの集積層はない。交換性陽イオンの大部分をカルシウムが占め,塩基飽和度は比較的高く(35%以上),微酸性ないし中性反応を示す。レシベ化作用(粘土の移動集積)を受けて下層に粘土の集積層が形成されており,土壌構造の表面に粘土皮膜が認められる。第三紀あるいは更新世の温暖期に形成された古土壌である場合が多い。地中海性気候地域のカルスト地帯に広く分布し,ガリグgarigueとよばれる矮性(わいせい)低木群系からなるきわめて貧弱な植生景観を構成し,ブドウ,オリーブの栽培地あるいはヒツジやヤギの放牧地となっている。なお炭酸塩質岩石に由来する褐色の土壌はテラ・フスカterra fuscaとして区別されている。またブラジル高原南西部に分布する輝緑岩や玄武岩に由来する赤紫色の土壌の名称であるテラ・ロッシャterra roxaと混同しやすいので注意を要する。
執筆者:永塚 鎮男
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炭酸塩の成分に富む岩石、すなわち石灰岩や石膏(せっこう)岩地帯の風化土壌のうち、鉄の酸化物を多量に含むもので、とくにB層にあたる鉄分の集積層が明赤色を呈している。地中海沿岸に広く分布し、イタリア語の語源をもつ土壌名である。カルスト地形の発達しているアドリア海沿岸やスペインの南岸にとくに著しい。テラロッサの赤みは、石灰質母岩の風化に伴って生じた石灰分の溶解物残渣(ざんさ)としての鉄分の色であるが、酸化鉄を含む堅く固化した粘土分が特徴的であって、その生成過程はおそらく数千年以上の長年月の亜熱帯性多湿気候に由来する赤色土化作用によるものとの解釈が有力である。山口県の秋吉台(あきよしだい)などのカルスト台地にみられる赤褐色の土壌も同類である。
[浅海重夫]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…塩基に富んでおり反応は微酸性ないし中性である。B層(下層)が赤色のものを地中海赤色土(テラ・ロッサに相当する),褐色のものを地中海褐色土という。肉桂色土は,乾季と雨季が明りょうに区別される半乾燥地中海性気候の乾性低木林下に生成される土壌で,有機物含量は深さとともに漸減し,塩基で飽和され,断面下部に炭酸塩の集積層がある。…
…セラードは,酸性土壌におおわれていて農作物には不適当な地域で,ブラジル政府は,日本などの協力によって土壌を改良し,この地域を農業地域として開発しようとしている。南の亜熱帯森林帯からアラウカリア森林(ナンヨウスギ)の地域にかけては,玄武岩が風化した暗褐色で肥沃な土壌のテラロッサが分布し,農業生産の高い地域になっている。さらに,最南部のカンポの地域は,ガウショ(ガウチョ)平原とも呼ばれ,有名な牧畜地域となっている。…
※「テラロッサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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