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コロンビアの政治家。1960年代以降、半世紀以上に及ぶコロンビア政府と左翼ゲリラとの内戦終結に向けた交渉を主導した功績を評価され、2016年のノーベル平和賞を授与された。平和賞の賞金800万クローナ(約9500万円)を同国内戦犠牲者の支援のため寄付すると表明した。
コロンビアの首都ボゴタ生まれ。大伯父が元大統領、従兄弟(いとこ)は副大統領を務めた名門政治家一族の出身である。コロンビア北部のカルタヘナ海軍兵学校を経てアメリカのカンザス大学経済ビジネス学部卒。イギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクスやアメリカのハーバード大学大学院を修了。国際コーヒー機関勤務やコロンビア国内の最有力紙エル・ティエンポの副編集長などを経て政界へ進出。1991年に通商大臣、2000年に財務大臣などを歴任、2006年から務めた国防大臣時には、左翼ゲリラ・コロンビア革命軍(FARC:Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia)からの人質奪還作戦や掃討作戦を指揮した。2010年の大統領選で初当選し、2014年に再選された。大統領就任後すぐに断絶状態にあったベネズエラ政府との国交を回復。2012年からコロンビア革命軍との停戦交渉を開始し、2016年9月に和平合意に達した。ただこの和平合意案には、殺人、テロ、誘拐などを繰り返したコロンビア革命軍メンバーの政界復帰や元戦闘員の刑の減免などが盛り込まれていたため、2016年10月の国民投票で合意案は否認され、和平合意は宙に浮いた。
しかし一連の和平に向けた功績を評価され、ノルウェーのノーベル賞委員会からノーベル平和賞を受けた。内戦終結に至っていない段階でのノーベル平和賞授与にはコロンビア内戦和平を後押しするねらいがあるとみられている。
[矢野 武 2017年3月21日]
ブラジル南東部、サン・パウロ州南東部の港湾都市。大西洋から入り込んだグアルージャ水道の奥5キロメートルにあるサン・ビセント島に位置する。人口41万7983(2000)。1534年に建設され、ブラジル南部におけるポルトガルの植民活動のもっとも重要な拠点であった。北西60キロメートルにあるサン・パウロ市の外港として急速に発展し、世界一のコーヒー積出し港となった。大西洋に面する入り江の海岸にはホテルが林立し、リオ・デ・ジャネイロのコパカバーナ海岸と並ぶ保養地としても有名である。市街地の改造が進められ、広い並木道や郊外の高級住宅地が建設された。サン・パウロ市とはハイウェーと鉄道で結び、コーヒーのほか砂糖、オレンジなどを輸出し、機械類を輸入する。サン・パウロ市側の近郊の工業化が目覚ましく、精油、紡績など多種類の工場がある。1908年(明治41)6月、ブラジルへの最初の日本人移住者781名が上陸した日本人ゆかりの地である。
[山本正三]
ブラジル南東部,サン・パウロ州の大西洋沿岸地帯にある都市で,ブラジル最大の港をもつ。人口41万8375(2005)。サン・ビセンテ島上にあるが,大陸に密着し,サン・パウロ市より63kmの地点にある。16世紀,植民初期に開けたが,長く一寒村にすぎず,19世紀中葉からサン・パウロ州コーヒー生産の爆発的成長とともに〈コーヒーの港〉となった。世界消費量の7~8割を占めてきたブラジル・コーヒーの大部分はサン・パウロ,パラナ両州の内陸より送られて,この港からおもにヨーロッパ,北米に輸出された。またコーヒーの全盛期約1世紀の間に約300万人の外国移民(日本移民も)が入国したが,そのほとんどがこの港に上陸した。サン・パウロ州には早く1860年代以来鉄道網がよく発達し,この港を育てた。また1930年以降サン・パウロ首都圏はラテン・アメリカ最大の工業地帯に成長し,サントスは今,〈コーヒーの港〉から〈工業地帯の港〉に変貌しつつある。
執筆者:前山 隆
フィリピンの作家。ルソン島リサール州の生れ。苦学してマニラの師範学校を卒業,教師となった。このときフィリピン革命を経験,以後目覚ましい社会活動が開始された。1902年にフィリピン初の労働組合,フィリピン民主労働組合の創設に参加,03年以後は《再生》ほか多数のタガログ語週刊誌の創刊,編集に携わり,自らも自然主義的社会派小説をそれらに連載,《朝焼けと日の出》(1906)は社会派タガログ文学の古典とされている。1910-22年にリサール州知事,ヌエバ・ビスカヤ州知事,上院議員などを歴任した。その後タガログ語,タガログ文学の普及と国語の育成に尽力。フィリピン大学その他で教壇に立つとともに,国立国語研究所の所員および所長(1941-45)をもつとめ,多くの貴重な業績を残した。
執筆者:池端 雪浦
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