ベルギーの首都で,ブラバント州の州都。首都圏人口100万(2004)。オランダ語ではBrusselと綴り,英語ではブラッセルズBrussels。ブラバントを南北に貫流するセンヌSenne川沿いの低地とその東側の台地に発達した都市で,人口増加に伴って周辺に拡大し,最近では外国人居住者も多い。低地に南北に工業地帯(繊維,食品,化学など)が延びるが,むしろベルギーの行政,情報,商業,金融の中心としての性格が強い。19世紀以来の鉄道網と南北に延びる運河を持ち,現在では自動車道路網の要衝となっている。しかし,言語紛争に伴うベルギーの地域自立化傾向によって,中心地機能の一部をアントワープとリエージュに委譲しつつある。オランダ語地帯に囲まれているが,首都としてフランス語とオランダ語を公用語とし,しかも住民の圧倒的多数がフランス系なので,言語紛争の舞台となっている。ヨーロッパ連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の本部所在地で,国際会議がしばしば開かれる。
ブリュッセルは,1000年ごろセンヌ川の航行可能開始点に設けられた城塞と市場を起源とし,東西交通路を扼する地理的好条件と毛織物工業の発達によって,ブラバント公領の中心都市に成長した。14世紀には民衆闘争が激発したが民主化は狭い範囲に抑えられ,15世紀後半ブルゴーニュ公国によるネーデルラント統一に伴って,その行政的中心となった。その後ネーデルラント南部の最有力都市としての地位を保ち,ベルギー独立(1830)とともに首都となった。この間,文化面での活動も盛んで,著名な画家(ファン・デル・ウェイデンら)や彫刻家を輩出し,タピスリーなどの工芸品が作られた。今日,町の中心の大広場(グラン・プラース)には,96mの鐘塔を誇る市役所(ブラバント・ゴシック,15世紀)や多数のギルド会館が立ち並び,当時の繁栄をしのぶことができる。ほかにも,サン・ミシェル大聖堂(13~15世紀)をはじめとする多くのゴシックおよびバロックの教会堂,19世紀末アール・ヌーボー様式の住宅(V. オルタらによる)などを見る。1834年創設の大学,ブリュッセル王立美術館がある。
執筆者:森本 芳樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
ベルギーの首都。ネーデルラントの交通の要衝を占めた地理的条件に恵まれ,毛織物工業の繁栄によって,ブラバント地方の中心都市となった。1830年ベルギーの独立により,首都と定められたが,オランダ語(フラマン)に囲まれながらフランス語系(ワロン)の住民が圧倒的な多数を占めたため,熾烈な言語戦争の舞台となった。第二次世界大戦後ヨーロッパ連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の本部が置かれ,ヨーロッパ統合の中心的な役割を演じている。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…現在はベルギーのブラバント州とアントワープ(アントウェルペン)州,オランダの北ブラバント州から成る。フランス語地帯に属するベルギーのブラバント州の南半分およびフランス語とオランダ語を公用語とするブリュッセル以外は,オランダ語を用い,オランダ領も含め住民の大部分はカトリック。南部は標高160mほどで丘陵に富み,北端は海面水準に近い。…
…正式名称=ベルギー王国Koninkrijk België∥Royaume de Belgique∥Kingdom of Belgium面積=3万0528km2人口(1996)=1018万人首都=ブリュッセルBruxelles(日本との時差=-8時間)主要言語=フラマン語(オランダ語),ワロン語(フランス語)通貨=ベルギー・フランBelgian francヨーロッパ北西部にある立憲君主国。北はオランダ,東はドイツ,南東はルクセンブルク,南はフランスと境を接し,西は北海に面して65.5kmの海岸線を形づくりイギリスに対する。…
※「ブリュッセル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
突発的に発生し、局地的に限られた地域に降る激しい豪雨のこと。長くても1時間程度しか続かず、豪雨の降る範囲は広くても10キロメートル四方くらいと狭い局地的大雨。このため、前線や低気圧、台風などに伴う集中...