日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラハ学派」の意味・わかりやすい解説
プラハ学派
ぷらはがくは
1926年マテジウスVilém Mathesius(1882―1945)が結成した学者集団を母体とする言語学派。1939年のナチス侵攻で活動を抑圧されるまでを古典期とし、チェコおよび周辺諸国の学者が定期的に会合、研究討論を重ね、機関誌『プラハ言語学団論集』Travaux du Cercle Linguistique de Pragueおよび『言葉と文学』Slovo a slovesnostを発行、内外に影響を与えた。トルベツコーイ(トゥルベツコイ)とヤーコブソンの業績がとくに有名である。第二次世界大戦後、新時代に入り、1964年に『プラハ言語学論集』Travaux Linguistiques de Pragueを創刊、現在に至る。この学派の基本的特色は、言語を機能的観点から構造的に分析するいわゆる機能主義であり、言語のもつ潜在的性質や言語外の現実との関係を重視するが、F・ド・ソシュールの学説などと並び構造言語学の一派とされる。音韻論のほか言語の通時的、共時的様態の広範囲に及ぶ優れた研究があり、近来マテジウスとムカジョフスキーが高く評価され、言語学、文芸学の諸分野、とくに統語論、文体論で注目されている。その後バヘクJ.Vachek、ダネシュF.Daneš.、フィルバスJ.Firbas、ズガルP.Sgallらが伝統を継いで活躍した。
[飯島 周]