プロペラ(読み)ぷろぺら(英語表記)propeller

精選版 日本国語大辞典 「プロペラ」の意味・読み・例文・類語

プロペラ

〘名〙 (propeller)
航空機船舶などに推力を与える推進装置。軸につけた数枚の羽根が回転して推力を生じる。推進器。〔舶用機械学独案内(1881)〕

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デジタル大辞泉 「プロペラ」の意味・読み・例文・類語

プロペラ(propeller)

航空機・船舶などで、エンジンの回転力を推進力に変える回転羽根。船舶の場合は、ふつうスクリューという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロペラ」の意味・わかりやすい解説

プロペラ
ぷろぺら
propeller

原動機の回転力を前進力(推力)に変えて、飛行機や船舶を推進させる装置。

[落合一夫]

飛行機のプロペラ

翼状の断面をもった、幅の狭い、ややねじれた羽根を、エンジンの回転軸に放射状に取り付けてある。羽根の数は飛行機の大きさとエンジンの出力によって異なるが、通常2枚から4枚であり、多いものは5枚から8枚のものがある。

[落合一夫]

推力発生の原理

現在二つの理論が並行して使われている。その一つは運動量理論で、プロペラを回転させることによって飛行機の速度よりも速い空気の流れ(プロペラ後流)をつくりだし、プロペラ回転面の前後の空気の運動量の差による反作用として推力を得るというもの。もう一つは翼素理論で、プロペラの羽根の各部分の断面が飛行機の翼と同じように働くと考え、回転によって羽根に当たる風と飛行機の前進によって受ける風とを合成した風向きに対し、羽根に適当な角度(翼の迎え角にあたる)をもたせれば、羽根に空気力学的な力を生じ、その揚力成分が推力となるというものである。

[落合一夫]

特徴

長所として次の諸点が考えられる。(1)エンジンを回せば大きな推力を得ることができるので、静止状態からでも加速性がよい。(2)回転速度を低くしたり、羽根の材質をくふうして固有振動数を大きくすれば騒音を抑制できる。(3)飛行機の速度制御、ことに低速飛行中の速度制御が容易であり、またエンジンを燃料消費率のよい回転数に保ちながら飛行速度が変えられるので燃料消費量を少なくできる。

 反面、次のような欠点(問題点)がある。(1)プロペラ先端の速度はプロペラの回転速度と飛行機の前進速度が合成され非常に速くなっているため、高速で飛行すると、プロペラ先端は音速を超え、衝撃波が発生してプロペラ効率が急激に低下し、飛行速度に限界ができる。(2)エンジンの回転運動をプロペラで推力に変える間の機械的損失が多く、エンジンの出力が十分に利用できない。(3)運転操作にあたってエンジンとプロペラの両方を制御しなければならず、操作がめんどうである。(4)プロペラの回転が飛行機の安定性や操縦性にいろいろの影響を与え操縦がむずかしくなる。

[落合一夫]

種類と構造

プロペラの羽根角(プロペラ回転面と羽根との間の角度)をピッチという。ピッチの大小はエンジンの回転数や飛行速度に関係があり、飛行状態にあわせてピッチを変えられるようにしておくと、つねにプロペラ効率を高い状態に保つことができる。たとえば、離陸時はエンジンの回転数が高く速度は低いのでピッチを小さく、巡航中は回転数を低くしているのでピッチを大きくする。このようにピッチを変更できる仕掛けをもったプロペラを可変ピッチプロペラvariable pitch propellerという。またピッチを変えることのできないプロペラを固定ピッチプロペラfixed pitch propellerといい、ごく簡単な構造の飛行機に用いられている。

 可変ピッチプロペラのうち、あらかじめプロペラ(またはエンジン)の回転数を決めておけば、飛行状態や飛行速度に関係なくつねにその回転数を保つ機構をもたせた定速プロペラconstant speed propellerがあり、現在の可変ピッチプロペラのほとんどはこの形式になっている。これによって飛行速度に適した回転数を自動的に維持できるので、操縦士の疲労を防ぐのに大きく役だっている。また、多発機が飛行中にエンジンの一台が停止してしまったとき、ピッチをそのままにしておくと風圧でプロペラが回されて、大きな抵抗になり方向維持がむずかしくなったり、エンジンの故障をさらに悪化させる。そこで、エンジンが停止すると自動的に羽根を気流とほぼ平行にしてプロペラの回転を防ぐ機構をもたせたものをフェザーリングプロペラfeathering propellerという。さらに着陸後や離陸を中止するとき、ピッチを逆にして推力を逆転させて車輪ブレーキの働きを助けて滑走距離を短くする可逆ピッチプロペラriversible pitch propellerがある。また大出力のエンジンでは出力を吸収するためプロペラの回転による反作用で機体が逆に回されるという反トルクを受けるが、これを防ぐために、2個のプロペラを前後に重ね、互いに反対方向に回転させる二重反転プロペラcontra rotating propellerが使用されることもある。

 プロペラは現在ではほとんどが軽合金またはスチールでつくられているが、木製も少数使われている。しかし最近では複合材料を用いて騒音の低下と効率の向上を図ったものも多くなってきた。以上のように、プロペラは多くの特長や欠点をもっている。ことに騒音や燃料の経済性の面でジェットエンジンより優れた点があり、小型機では当然将来も使われていくであろう。さらに最近では高バイパス比ターボファンエンジンの発展の一方向として、ファンをケースの外に出して回転させるプロップファンprop fanや、ダクトなしターボファンunducted fanとしての利用が注目され、実用化への実験が続けられている。ターボファンやジェットエンジンの時代になっても、プロペラは有効な推進手段として、今後も長く使い続けられていく装置といえる。

[落合一夫]

船舶のプロペラ

船舶関係用語としてはスクリュープロペラ、略してプロペラとよばれているが、一般にはスクリューということが多い。羽根の形は飛行機と違って幅が広く、楕円(だえん)形または烏帽子(えぼし)形で、直径は大型船では10メートル以上にもなる。羽根の枚数は、船体に及ぼす振動を最小限にし、しかも効率をもっともよくするように決められる。レジャーボートのような小さな船では2~3枚、軍艦など高速船では3枚、商船では4~6枚になる。プロペラが回転してねじのように進んだとき、1回転の間に進む距離をピッチといい、その大きさは羽根を軸に取り付ける羽根角によって決まる。普通、船の速力を変えるにはプロペラの回転数を変え、後進するにはエンジンを逆転する必要がある。この不便を解消するため、第二次世界大戦前に、エンジンの回転数と回転方向を一定にしたまま、船橋から遠隔操作でピッチを自由に変える可変ピッチプロペラが開発された。エンジンを操作せずに前進、変速、停止、後進ができるので操船が非常に楽になる。初めは小馬力用から実用化し、引き船やフェリーのように頻繁に前後進を行う小型船に採用された。1960年ごろからしだいに大馬力用のものがつくられるようになって通常の商船にも普及し、4万馬力級のエンジン、20万重量トン級の船にも使用されるようになっている。

[森田知治]


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百科事典マイペディア 「プロペラ」の意味・わかりやすい解説

プロペラ

広義には推進装置一般を指すが,ふつうはそのうち,回転により船,飛行機などを推進するものをいう。船ではスクリュープロペラあるいは単にスクリューと称することも多い。作動流体や作動状態は異なるが,飛行機のプロペラも船のプロペラも原理は同じで,プロペラ翼に生じる揚力の軸方向成分を推力として利用する。〔飛行機のプロペラ〕 飛行機のプロペラは,回転軸のまわりに翼と同様な断面でねじれをもつ羽根2枚以上を取りつけたもので,ねじれの程度(固体中で回転したと考えたとき,1回転で進む距離)をピッチという。これを回転させると翼の揚力に相当する力が推力として発生する。実際に推力となって働く馬力とエンジンの軸馬力との比をプロペラ効率といい,よく設計されたプロペラでは80〜85%に達する。エンジンの馬力向上につれて,これを吸収するためプロペラの直径,羽根面積を大きくし,枚数も増すようになり,8枚羽根で1万5000馬力以上を吸収するものもある。現在では飛行状態によってピッチを変えることのできる可変ピッチプロペラが大半。プロペラ羽根は回転速度と飛行速度の合成速度をもつため,機体の飛行速度が音速に達するかなり前にすでに空気の圧縮性の影響を受け,効率が急激に低下するので,ふつうのプロペラ機の実用範囲は時速800km台までとされている。〔船のプロペラ〕 羽根の形は烏帽子(えぼし)形で,回転によって水を後方に押し,その反動で船を進める。設計には単独の効率のほか,船体の後流なども考慮する。材料は海水に対する耐食性のよいマンガン青銅,アルミニウム青銅など。羽根の数は小型船では2枚のものもあるが,ふつう高速回転のものは3枚,貨物船,タンカーなど喫水変化の大きい船では3〜6枚である。
→関連項目ターボプロップエンジン反動舵飛行機

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プロペラ」の意味・わかりやすい解説

プロペラ
propeller

航空機の推進装置。プロペラは2~4枚の翼 (プロペラ・ブレード) を回転軸に取り付け,エンジンで回転させると軸方向への力,すなわち推力を発生する。回転面に対するプロペラ翼の断面の傾きをピッチ角または翼角といい,飛行中に変えられるものを可変ピッチ・プロペラ,変えられないものを固定ピッチ・プロペラという。可変ピッチ機構に調速機を組み合わせ,飛行速度が変わっても,ピッチ角を自動的に調整することで回転数を一定に保つようにしたものを定速プロペラという。定速プロペラは,離陸,上昇,最高速度での飛行など,作動状態が広い範囲で変わっても,エンジンとプロペラを組み合わせた推進装置全体の性能を高く保つことができる。また飛行機の着陸滑走距離を減少するために,プロペラのピッチを逆に (ピッチ角を負に) して,エンジンの力によって回転させ,空気を前向きに送ることによって,うしろ向きの推力を出させる装置を逆ピッチという。プロペラ・ブレードの先端速度が 300m/s (マッハ数約 0.7) をこすと効率が悪くなるため,飛行速度 800km/h以下の飛行機に最も有効な推進装置となっている。

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世界大百科事典 第2版 「プロペラ」の意味・わかりやすい解説

プロペラ【propeller】

船や飛行機に推力を与える推進装置。船の場合,スクリュープロペラscrew propellerあるいは単にスクリューとも呼ばれる。円筒形をしたボス(ハブとも呼ぶ)に羽根をつけ,回転させて軸方向の力を発生させるもので,流体力学的には風車,扇風機,軸流ポンプなども同じ原理に基づいている。ただ風車は空気の流れにより回転モーメントを発生させるのが主目的であり,扇風機やポンプは回転のエネルギーを流体の運動エネルギーや圧力に変換するのが主目的である点が異なっている。

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世界大百科事典内のプロペラの言及

【航空エンジン】より

…航空エンジンには,ピストンエンジンやターボプロップエンジンのように動力を軸動力の形でとり出す軸出力型エンジンと,ターボジェットエンジンやターボファンエンジンのように前方から吸い込んだ空気を後方へ高速の噴流として噴出し,その際の運動エネルギーの増加の形で動力をとり出すジェット出力型エンジン(いわゆるジェットエンジン)がある。後者は前方より吸い込んだ空気を航空機の速度より速い速度で後方に噴出し,その際の加速力の反力としてエンジン自身で直接推力を発生するが,前者では軸動力でプロペラを回し,プロペラを通る空気流を後方に加速して推力を得ている。プロペラの羽根に対する空気の相対速度は周速と機体の速度の合成速度となるので,羽根の先端部では機体の速度が音速になるはるか以前の段階で音速に近づき,衝撃波が発生してプロペラ効率が低下する。…

【飛行機】より

…人間が乗って空気の中を飛ぶ乗物を総称して航空機といい,その中で,ジェットエンジン,プロペラなどの推進装置の力で前進し,その際,固定翼(回転したり,羽ばたいたりすることのない翼)に生ずる動的な上向きの空気力,すなわち揚力によって自分の全重量を支えて飛ぶものが飛行機である。航空機には,飛行機のほか,推進装置のないグライダー,回転翼の揚力を利用するヘリコプター,空気より軽いガスをいれた袋に働く空気の静浮力を利用する気球,飛行船などいろいろの種類がある。…

【舟∥船】より

… 一方,汽船の発達も急速であった。1843年には総トン数3400トンのグレート・ブリテン号がスクリュープロペラで大西洋を渡った。70年代にはボイラーの蒸気圧を上げるとともに,2本,後には3本のシリンダーで次々に蒸気を膨張させて動力を得る多段膨張機関が現れて汽船の能率が向上した。…

※「プロペラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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