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スペインの詩人。セビリャに生まれ,マドリードで没する。幼くして孤児となり,健康に恵まれず,結婚に失敗するなど生涯不遇であった。1850年代,ハイネに代表されるドイツ抒情詩の要素とアンダルシア民謡の要素とをスペイン詩に導入しようとする動きがみられたが,ベッケルはその中から現れた。生前に発表された作品の数は少なく,また68年の革命の混乱の中で,完成していた詩集の草稿が失われたが,後に作者の手で書き直され,彼の死後,友人たちによって《抒情詩集》(1871)として出版された。そこでは愛,幻滅,詩と詩人,孤独と絶望など,おもにロマン派から引き継がれたテーマが,飾りけのないスタイルでうたわれている。散文の作品には,書簡形式による《僧房便り》(1864),スペイン内外の説話を素材とする《伝説集》(1860-63発表)がある。ホフマンの影響のみられる後者は,愛,かなたの世界の存在などをテーマとし,感覚の強調,色彩に満ちた絵画的描写,暗喩の大胆な使用によって,彼の詩と同様,モデルニスモの前ぶれとなった。
執筆者:野谷 文昭
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【19世紀――ロマン主義からリアリズムへ】
19世紀前半はヨーロッパ全体にロマン主義が流行したが,スペインにもやや遅れて移入され,詩と演劇の分野に成果が見られた。革命運動と激しい恋の末に夭逝したJ.deエスプロンセーダの,ドン・フアン伝説を扱った物語詩《サラマンカの学生》と,神秘的ともいえる深遠な詩語を操った孤独な夢想詩人G.A.ベッケルの《抒情詩集》は文学史に残る傑作である。演劇では1835年に上演されたリーバス公爵の《ドン・アルバロ》が,ビクトル・ユゴーの《エルナニ》のスペイン版ともいうべき,ロマン主義の勝利を決定づける作品であった。…
※「ベッケル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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