ベニシジミ(英語表記)Lycaena phlaeas

改訂新版 世界大百科事典 「ベニシジミ」の意味・わかりやすい解説

ベニシジミ
Lycaena phlaeas

前翅が美しい赤橙色の地色の鱗翅目シジミチョウ科の昆虫。開張3~3.5cmと小型で,季節的に春型と夏型とがあり,夏型では色調が黒ずんでいる。北アフリカ,ヨーロッパからユーラシア大陸の北部を経て北アメリカ大陸に及ぶ。日本では北海道,本州,四国,九州に広く分布する普通種で,耕作地周辺の路傍堤防などの草地によく見られる。暖地では年数回発生を繰り返し,厳寒期の12~2月を除き成虫を見ることができる。成虫は春はオオイヌノフグリ,夏はヒメジョオン,秋はノコンギクなどの花によく集まる。飛び方は敏速であるが長距離を飛ばずにすぐ近くにとまる。雄は草本の葉上や小石の上にとまり,周囲になわばりをつくる。幼虫の食草はタデ科スイバ,ギシギシ,ノダイオウなど。雌は食草の葉にとまり,歩きながら根もとに降りて葉の基部などに1個ずつ産卵する。幼虫は食草の葉に穴をあけながら食べる。幼虫で越冬
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベニシジミ」の意味・わかりやすい解説

ベニシジミ
べにしじみ / 紅小灰蝶
small copper
[学] Lycaena phlaeas

昆虫綱鱗翅(りんし)目シジミチョウ科に属するチョウ。日本では北海道より九州にわたって各地にもっとも普通にみられるシジミチョウの1種。ただし吐噶喇(とから)列島以南には分布しない。国外では朝鮮半島、中国からヨーロッパにかけて、ユーラシア大陸の北・中部にきわめて広く分布する。はねの開張32ミリメートル内外。春型、秋型では前ばねの表は橙赤(とうせき)色で、9個の黒点と黒い縁どりがあり、きわめて美しく、また特徴的であるが、夏型では黒鱗が広がり、とくに雄では完全に近く黒化する。年数回の発生で、早春より秋まで路傍、荒れ地などの草地に多い。幼虫の食草はスイバ、ギシギシなどのタデ科植物。幼虫の状態で冬を越す。

白水 隆]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベニシジミ」の意味・わかりやすい解説

ベニシジミ
Lycaena phlaeas

鱗翅目シジミチョウ科。日当りのよい草原などに普通にみられる赤色系のシジミチョウ。前翅の開張幅 32mm内外。前翅は朱赤色の地に黒点をもち,後翅は暗褐色の地で後縁沿いに朱赤色の帯をもつ。年4~5回発生し,タンポポ,シロツメクサ,ヒメジョオンなどに吸蜜に来る。幼虫の食草はスイバ,ギシギシなど。ユーラシア大陸に広く分布し,南西諸島を除いた日本全国にみられる。

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百科事典マイペディア 「ベニシジミ」の意味・わかりやすい解説

ベニシジミ

鱗翅(りんし)目シジミチョウ科の昆虫の1種。ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の中・北部に広く分布。1亜種は北極圏内にも及び,チョウ類中世界最北に分布。開張30mm内外,前翅は朱赤色で黒点があり,後翅は暗褐色,外縁に赤紋がある。幼虫はスイバなどを食べ,幼虫で越冬。成虫は早春〜晩秋に数回発生。

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