オオイヌノフグリ(その他表記)Veronica persica Poir.

改訂新版 世界大百科事典 「オオイヌノフグリ」の意味・わかりやすい解説

オオイヌノフグリ
Veronica persica Poir.

畑や道端に生える越年草で,ゴマノハグサ科雑草。春,青紫色の可憐な花を咲かせる。果実の形がイヌのふぐり(睾丸)に似ていることから和名がついた。茎は分枝して横に広がり,長さ10~25cmになる。葉は茎の下部では対生し,上部では互生する。卵円形で数対の鋸歯があり,長さ7~18mm,幅6~15mm。春,茎の上部の葉のわきごとに1花をつける。4枚の萼片は長楕円状披針形で,開花後大きくなり,果実を包む。花は皿形で径7~10mm,4裂し上片1枚は大きい。蒴果(さくか)はやや平たい倒心形で先がへこみ,両端はややとがり,数個の種子がある。種子は円形で表面にしわがある。西アジアからヨーロッパ原産で,明治の中ごろ日本に帰化し,今では全国に広がっている。

 近縁イヌノフグリV.didyma Tenore var.lilacinaHara)Yamaz.は葉がやや小さく,花は小型で淡紅色,果実は円みがあるので異なる。東アジアに広く分布し,明治以前は日本にはこれしかなかったが,オオイヌノフグリが広がってからはあまり見られなくなった。タチイヌノフグリV.arvensis L.は茎が直立する傾向があり,上部の葉には柄がなく,花はるり色でごく小さく径4mm,果実は扁平,種子は扁平な楕円形である。ヨーロッパ原産で,明治のころ帰化し,全国に普通に見られる雑草である。

 上記の種類が属すクワガタソウ属Veronica(英名speedwell)は茎の主軸に花がつく群と,主軸は花期に生長を止め,葉のわきから花序を出す群とがある。前者にはイヌノフグリ類,ヒメクワガタ類,テングクワガタ類などがあり,後者にはクワガタソウ類,グンバイヅル類,ヒヨクソウ類,カワヂシャ類などがある。両者は系統的にかなり異なるものと考えられる。花がきれいな種は観賞用に栽植される。

 野生のクワガタソウV.miqueliana Nakaiは山地の林中に生える多年草で,高さ10~20cm。茎の上部に対生する卵形の葉を数個つける。5~6月に葉のわきから総状花序をだし,数個の花をつける。花は淡紅色で皿形に開き,径8~13mm。果実は扁平な三角状扇形で,倒披針形の4枚の萼片がある。種子は扁平な楕円形である。名は鍬形草で,果実につく萼片の形がかぶとの鍬形に似るのでいう。東北地方南部から九州の太平洋側に分布する。カワヂシャV.undulataWall.は川岸や溝などの湿地に生える越年草で,全草柔らかい。5~6月に上部の葉のわきに細長い花序を伸ばし,多数の小さな淡紅紫色の花をつける。名は川岸に生えるチシャの意味で,若葉を食用とし,若芽を料理のつまとして利用する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオイヌノフグリ」の意味・わかりやすい解説

オオイヌノフグリ
Veronica persica

オオバコ科の越年草。ヨーロッパ原産で,1887年頃に東京で帰化が確認され,その後日本全国に広がり,路傍や畑にごく普通に見られるようになった。茎はよく分枝して横に広がり,葉が下部で対生,上部で互生する。葉は卵円形で長さ 7~18mm,幅 6~15mm,毛を散生し,縁に数個の鋸歯をもつ。早春,茎の上部の葉腋から細長い柄を出し,花を 1個ずつつける。花冠は瑠璃色で 4裂し,径 7~10mm。果実イヌノフグリに似た蒴果で,やや扁平な心臓形である。

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百科事典マイペディア 「オオイヌノフグリ」の意味・わかりやすい解説

オオイヌノフグリ

ゴマノハグサ科の二年草。ヨーロッパ原産で,明治初年に渡来した帰化植物。日本全土の路傍,野原などに野生化する。茎は基部で分枝し地上に広がり,葉は対生または互生し,卵円形で柄は短い。早春,葉腋に長い花柄を出し径8mm内外の花を開く。花冠は深く4裂し,るり色で紫色の条がある。おしべ2個。近縁のタチイヌノフグリも帰化植物で,茎は分枝して直立し,5〜7月,上部の葉腋に径約4mmの無柄の花を開く。同じく近縁のイヌノフグリは日本,東アジアに分布し,花は小さく,花柄は葉と同長。名は果実がイヌのふぐり(睾丸)に似ることから。オオイヌノフグリが広がってからあまり見られなくなった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオイヌノフグリ」の意味・わかりやすい解説

オオイヌノフグリ
おおいぬのふぐり

イヌフグリ

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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