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ベニバナ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ベニバナ
べにばな / 紅花
safflower
[学]Carthamus tinctorius L.

キク科の二年草。英名のサフラワーの名でよばれることもある。茎は直立して高さ0.6~1メートル。葉は長さ5~10センチメートル、浅く裂けあるいは鋸歯(きょし)があり、それらの先は鋭い刺(とげ)となり、全体が硬質で互生する。夏に茎頂にアザミに似た形の頭花をつける。頭花は管状花が多数集まり、花弁は初め鮮黄色、やがて赤色に変わる。種子は白色、長さ約5ミリメートルの紡錘形。
 原産地はエチオピアといわれ、エジプトでは紀元前2500年ころから栽培された。紀元前にインドに伝わり、ヨーロッパに普及したのは中世(16世紀)以降で、アメリカ大陸へはスペイン人がメキシコに伝え、1950年以降にカリフォルニアで大規模に栽培され始めた。
 江戸時代は紅用として山形県が特産地だった名残(なごり)で、山形県の県花とされているが、栽培は少なく、おもに生花(せいか)、ドライ・フラワー用である。現在は染料としてよりも油料として重要で、おもにアメリカから輸入している。
 栽培にあたっては、突然変異でみいだされた無刺性品種が、取り扱いやすさ、つくりやすさ、および草丈が低くて切り花としてバランスがよいという点で、よく用いられる。直根性のため移植しにくいので、直播(じかま)きにする。暖地では9~10月、寒地では融雪後に土が乾いたら早めに、畦(あぜ)幅45センチメートルに2条、または75センチメートルに3条播きにする。株間は12~15センチメートル、1か所に4、5粒と多めに播く。[星川清親]

薬用・着色料

頭花を構成する管状小花を早朝に集めて乾燥したものを紅花(こうか)または紅藍花(こうらんか)と称し、漢方では通経、鎮痛剤として月経不順、月経痛、打撲症、腫(は)れ物などの治療に用いる。
 紅花を水に浸して黄色色素(サフロール黄)を溶かし出し、よく水洗いしてから水をきり、灰汁(あく)に浸すと紅色色素(カーサミン)が溶けて出る。これに米酢または梅酢を加えると、カーサミンが沈殿する。日本の伝統的な口紅は、この沈殿したカーサミンからつくったものである。ベニバナに含まれるこれらの色素は、布や紙の染色、食品着色料としても用いられてきた。このほか、白色の果実から脂肪油をとり、食用油(サフラワー油)としたり、燃やして出る煤(すす)から紅花墨を製する。この脂肪油はリノール酸を多く含有するため、コレステロール過多による動脈硬化症の予防に有効とされている。[長沢元夫]

文化史

エジプトのミイラの布は、ベニバナでも染められ、アメンヘテプ1世(前1539死去)のミイラにはベニバナの花が添えられていた。ディオスコリデスの『薬物誌』に記載されているCnikosをベニバナとみれば、古代ギリシアでは、ベニバナの種子をつぶして油をとり、菓子や便秘の薬に使ったことになる。中国へはシルク・ロードを経て伝わったと推定されるが、張華(ちょうか)(232―300)の『博物志』は、張騫(ちょうけん)(?―前114)がもたらしたと記している。ただし、これを疑問視する見解もある。6世紀の『斉民要術(せいみんようじゅつ)』は、ベニバナの栽培法、摘(つ)み方、染料の作り方のほか、種子の油をあかりに使うと述べている。日本への渡来は飛鳥(あすか)時代以前と推定され、『万葉集』にみえる呉藍(くれのあい)は、呉(ご)(中国)の藍(染料)の意味で、呉からの渡来を示唆する。呉藍からのちに紅(くれない)と変化した。現在、山形県が主産地であるが、江戸時代の『和漢三才図会』にすでに産地として名が出ている。[湯浅浩史]

文学

「紅(くれない)」とも「末摘花(すえつむはな)」ともよばれ、『播磨国風土記(はりまのくにふどき)』揖保(いぼ)郡・阿為(あい)山条に「紅草(くれのあい)」とみえ、「よそのみに見つつ恋ひなむ紅の末摘花の色に出(い)でずとも」(『万葉集』巻10)、「紅の初花染めの色深く思ひし心我忘れめや」(『古今集』恋4)などと詠まれた。また、灰汁(あく)で色あせるとされ、『古今集』雑躰(ざってい)・誹諧(はいかい)歌に「紅に染めし心も頼まれず人をあく(飽く・灰汁)には移るてふなり」と詠まれている。『源氏物語』で、鼻の赤い常陸宮(ひたちのみや)の姫君を、紅花にしゃれて末摘花と名づけたことはよく知られる。季題は夏。「眉掃(まゆは)きを俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花」(芭蕉(ばしょう))。[小町谷照彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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