ペッカリー(読み)ぺっかりー(その他表記)peccary

翻訳|peccary

デジタル大辞泉 「ペッカリー」の意味・読み・例文・類語

ペッカリー(peccary)

偶蹄ぐうてい目ペッカリー科の哺乳類総称イノシシに似るが、体はひとまわり小さく、毛色は黒っぽい。背中へそ状の脂腺があり、ヘソイノシシともいう。北アメリカ南部から南アメリカにかけての砂漠森林に、群れで暮らす。

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精選版 日本国語大辞典 「ペッカリー」の意味・読み・例文・類語

ペッカリー

  1. 〘 名詞 〙 ( [アメリカ] peccary はカリブ土語に由来 ) ペッカリー科の哺乳類の総称。体長一メートル前後、体高五〇センチメートル前後。イノシシに似ているが尾はごく短く、牙は口外へ出ない。背の後方にある腺から悪臭を放つ。森林などに群生し、雑食性。アメリカ合衆国南西部から中南米分布クビワペッカリーなど三種いる。へそいのしし。
    1. [初出の実例]「一個のペッカリー(豚に形似せる厚皮獣)を銃斃せり」(出典:十五少年(1896)〈森田思軒訳〉七)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペッカリー」の意味・わかりやすい解説

ペッカリー
ぺっかりー
peccary

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ペッカリー科に属する動物の総称。この科Tayassuidaeの仲間は、南・北アメリカに分布するイノシシに似た動物で、背に油状の分泌物を出す腺(せん)をもち、それをへそに見立ててヘソイノシシともよばれる。外観はイノシシに似るが、後肢の第5趾(し)が退化して3趾に近くなっていることや、歯数もイノシシの44本に対し前臼歯(きゅうし)が4本少ない40本である点などに違いがみられる。背部にある腺から出る分泌物はマーキングに用いられ、草木や木の根などに塗り付けられる。群れをなして暮らし、キノコ、根、果実などをあさるほか、バッタ、甲虫、幼虫、爬虫(はちゅう)類、死肉など動物質も食べる。活動時間は、夏季は早朝と夕刻で、冬季にはとくに時間を選ばない。定まった発情期は認められず、1産1~2子を140~150日の妊娠期間ののちに分娩(ぶんべん)する。雌はほぼ8か月、雄は約11か月で性成熟する。

 本科には、クビワペッカリーTayassu tajacuクチジロペッカリーT. albirostrisの2種がある。クビワペッカリーは灰黒色の地に肩部から胸にかけて黄白色の帯状模様がある。体長75~100センチメートル、肩高55センチメートル、体重18~30キログラム。北アメリカ南部からパタゴニア南部にわたる砂漠地帯や森林に、5、6頭から十数頭の群れで暮らす。14亜種がある。クチジロペッカリーはやや大形で、体長113センチメートル、体重25~30キログラム。体色は灰黒色から黒褐色。口の周囲、頬(ほお)、のどなどが白色。100頭以上の大群をなして森で暮らす。5亜種があり、メキシコ南部からパラグアイに分布する。

増井光子

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改訂新版 世界大百科事典 「ペッカリー」の意味・わかりやすい解説

ペッカリー
peccary

別名ヘソイノシシ。アメリカ合衆国南西部からアルゼンチン中部にかけての南北アメリカに分布するイノシシに似た偶蹄類。クチジロペッカリーTayassu pecari,クビワペッカリーT.tajacuチャコペッカリーCatagonus wagneriなど,偶蹄目ペッカリー科Tayassuidaeに属する3種の哺乳類の総称。体長75~112cm,尾長1.5~10cm,体重14~40kg。四肢が細長く,体はイノシシよりもやや小さい。上あごの犬歯は,イノシシとは逆に下向きにのび,反芻(はんすう)類の胃に似た複雑なつくりの胃をもつ。背中の中央部に,興奮すると強い麝香(じやこう)臭を発する油状の物質を分泌する腺がある。別名のヘソイノシシは,分泌腺の部分の毛色が周囲と異なって円形の模様をつくることから,それをへそにみたことによる。体色はふつう黒褐色。砂漠から森林までのさまざまな環境に,ふつう5~15頭の群れで生活する。食物は,植物質のほか,ヘビ,昆虫,ミミズなど。季節を選ばず年間を通じて繁殖,妊娠期間は115~162日。ふつう1産2子。子は生まれてすぐに歩くことができ,イノシシのような育児用の巣はつくらない。
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百科事典マイペディア 「ペッカリー」の意味・わかりやすい解説

ペッカリー

ヘソイノシシとも。偶蹄(ぐうてい)目ペッカリー科の哺乳(ほにゅう)類3種の総称。クビワペッカリーは体長80〜95cmほど。背は濃い灰色,四肢は黒っぽく,頸(けい)部に淡色帯がある。テキサス〜アルゼンチン北部に分布。森林や草原に小群ですみ,おもに日中,果実,昆虫,ヘビなどを食べる。性質は荒く,猟犬をも殺すといわれる。興奮すると背の分泌腺から麝香(じゃこう)臭のある液を分泌。1腹1〜2子。クチジロペッカリーはメキシコ〜アルゼンチン北部にすむ。昼夜活動する。体長100〜120cm。チャコペッカリーはグラン・チャコに分布。とげ林にすみ,日中活動する。体長96〜117cm。
→関連項目シアン・カアン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペッカリー」の意味・わかりやすい解説

ペッカリー
Tayassuidae; peccary

偶蹄目ペッカリー科に属する動物の総称。体長 75~90cm,体重 15~30kg。尾はほとんどない。外見はイノシシに似るが,後肢の小指は退化して3指になっており,歯の数もイノシシより少い。背面に脂液を分泌する腺をもち,これを臍 (へそ) に見立ててヘソイノシシともいう。警戒するとき,腺のあるところの背毛を直立させて,麝香 (じゃこう) に似た臭いの液を分泌する。南・北アメリカに分布し,30~35頭あるいはそれ以上の群れで移動する。クビワペッカリー Tayassu tajacu,クチジロペッカリー T. pecariの2種から成る。

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デジタル大辞泉プラス 「ペッカリー」の解説

ペッカリー

岡山県備前市にあるBIZEN中南米美術館のキャラクター。同市が所蔵するエクアドルで出土したヘソイノシシの土偶がモチーフ。

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