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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
北アメリカ大陸のリオ・グランデ渓谷以南に成長する、アルカロイドを含有する植物で、これを食べると幻覚症状をおこす。ペヨーテという語は、メキシコの先住民の言語の一つナワトルNahuatl語で、ウバタマサボテンLophophora williamsii Lemaireを意味するペヨトルpeyotlに由来する。白人に征服される以前からアステカ、ウィチョルその他のメキシコ・インディオとよばれたメキシコ先住民は、これを宗教的目的のために食べていたが、この習慣は約1870年以後北アメリカ先住民(インディアン)とくに平原先住民にも伝播(でんぱ)した。北米南西部先住民においてペヨーテ崇拝はシャーマニズムや妖術(ようじゅつ)信仰と密接に関連するようになった。ウィチョル社会では、毎年、シャーマンをリーダーとする集団が、昔先祖が住んでいたという聖地まで数百マイルを歩いてペヨーテをとりに行く。
[吉田禎吾]
…マラカメは祈禱医でもあり,邪術師でもある。10~2月の乾季には,ペヨーテという幻覚作用のあるサボテンを採集するために,サン・ルイス・ポトシ州などに数百kmに及ぶ巡礼に赴く。これを食べて恍惚状態になった男女は,大猟と豊饒を祈願する儀礼的舞踏をする。…
…精神展開薬は化学的に,(1)β‐フェネチルアミン(メスカリン,アンフェタミンなど),(2)インドール系物質(ジメチルトリプタミン(DMT),サイロシビン,ハルミンなど),(3)副交感神経薬(アトロピン,フェンサイクリジンなど),(4)リゼルギン酸誘導体(LSD‐25など),(5)その他(笑気,ナツメグ,マリファナ,バナナの皮など)に分類されるが,作用の強弱によってマイナー・サイケデリクスとメジャー・サイケデリクス(メスカリン,LSD,サイロシビン,DMT,STP,JB‐329など)とに二大別されることもある。
[幻覚薬の研究史]
中央アメリカでは古くからペヨーテなどの幻覚を起こす植物が知られていて宗教や儀式に使われてきた。キリスト教の伝道者がこれを悪魔的なものとして追放しようと努めたが,インディオたちがキリスト教に改宗してからも,こうした植物に対する信仰は残った。…
…メキシコではツナの果肉を固めたお菓子ケソ・デ・ツナやエキノカクトゥス属の茎の砂糖漬ドゥルセ・デ・ビスナガが市販されている。ウバダマはメキシコではペヨーテと呼ばれ,アルカロイドの一種で幻覚症状を引き起こすメスカリンを含み,古代から儀式に使われた。日本では麻薬の扱いを受け,輸入できない。…
…メキシコ産の小さなサボテンLophophora williamsiiからとれる精神展開薬で,幻覚を起こす。メキシコやアメリカ南西部のインディアンが,このサボテンの先端を切って乾かしたペヨーテを食べて神の実在を体験するために,16世紀中ごろから使用していた。1890年,エリスH.EllisとミッチェルW.Mitchellがこのペヨーテを研究し,96年,ベルリン大学薬理学教授のヘフターArthur Hefter(1860‐1925)と向精神薬研究の第一人者のレビンLouis Lewin(1850‐1929)が有効成分のメスカリンを分離した。…
※「ペヨーテ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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