ミショー(英語表記)Henri Michaux

デジタル大辞泉 「ミショー」の意味・読み・例文・類語

ミショー(Henri Michaux)

[1899~1984]フランスの詩人・画家。ベルギー生まれ。斬新な語法による幻想性のうちに、不安に満ちた内的世界を探究。また絵画では、アンフォルメル先駆者とされる。詩集ひだの中の人生」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「ミショー」の意味・わかりやすい解説

ミショー
Henri Michaux
生没年:1899-1984

フランスの詩人,画家。ベルギーのナミュールに生まれ,ブリュッセルで育つ。1924年パリに出て,《かつての私》(1927),《わが領土》(1929),《プリュームという男》(1930),《夜動く》(1935)などの詩集で,主として散文詩形を用いて夢魔に憑(つ)かれた自己の内部の狂気と幻覚の領域を探求する一方,南アメリカ,北アフリカ,アジアなど世界各地を旅行して,旅行記《エクアドル》(1929),《アジアにおける一野蛮人》(1933)を刊行する。第2次世界大戦中の41年にA.ジッドと出会い,彼の推賞に加えて,戦争中の魔法と呪文の世界とも言うべき特異な抵抗詩編により,戦後一躍有名になった。同時に,37年ころから本格的に描き始めていた絵が,記号やしみを思わせる不定形なイメージを自動記述的に描くところから,アンフォルメル絵画の先駆作品として認められ,画家としても広く知られるようになった。《試練・悪魔祓い》(1945),《襞(ひだ)の中の人生》(1949)などの詩集と並行して精力的に画業に励む。55年フランスに帰化。このころから麻薬メスカリンを試飲して意識の極限地帯への探検行い,《みじめな奇跡》(1956),《荒れ騒ぐ無限》(1957)などの文字デッサンによる体験記録で評判になった。彼はシュルレアリスム周辺に位置するが,その運動に加わったことはなく,独自の道を歩みつづけた。20世紀最大の詩人・画家の一人として,その評価は国際的にきわめて高い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミショー」の意味・わかりやすい解説

ミショー
みしょー
Henri Michaux
(1899―1984)

フランスの詩人、画家。ベルギー生まれだが、1955年フランスに帰化した。シュルレアリストと同世代に属し、共通する内的探求を課題としながら、いかなるグループにも属さずに独得の世界を開拓した。ロートレアモンの影響下に詩作を始め、外界の不可解な敵意への不安、そこに生きる困難さ、言語への不信感にさいなまれながら、言語に対する大胆な破壊作業を通じて特異なユーモアをたたえた斬新(ざんしん)な表現を生み出すことで、その不安を克服しようとした。その結果、言語は一種の悪魔祓(ばら)いの効用を帯びることになる。海外旅行体験をもとに奇妙な風俗の土地を描いた『エクアドル』(1929)、『アジアの一野蛮人』(1933)などの旅行記、奇怪な幻想に満ちた内的領土を描いた『グランド・ガラバーニュの旅』(1936)、生の困難を戯画化した『プリューム』(1938)などの詩集がある。また、麻酔性をもつメスカリンをはじめとする幻覚剤を用いた内部世界探求の軌跡は『みじめな奇蹟(きせき)』(1955)、『深淵(しんえん)からの認識』(1961)その他の著作や膨大な数のデッサンにみられる。象形文字的な線や飛沫(ひまつ)を中心とするその絵画作品はアンフォルメル絵画の先駆とみなされ、晩年の著作では文章とデッサンが混じり合った例も多い。ほかに詩集『かつての私』(1927)、『試煉(しれん)・悪魔祓い』(1945)など多数の作品がある。

[田中淳一]

『小海永二訳『アンリ・ミショー全集』全三巻(1953・青土社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミショー」の意味・わかりやすい解説

ミショー
Michaux, Henri

[生]1899.5.24. ナムール
[没]1984.10.18. パリ
ベルギー生まれのフランスの詩人,画家。水夫としてアジア,南アメリカを旅し,詩集『私は誰だった』 Qui je fus (1927) ,『わが領土』 Mes propriétés (1929) ,『プリュームという男』 Un certain Plume (1930) ,旅行記『エクアドル』 Equador (1929) ,『アジアにおける一野蛮人』 Un barbare en Asie (1932) などを発表,ジッドに認められ広く紹介された。第2次世界大戦後の作品には,『試練・悪魔祓い』 Épreuves,éxorcismes (1945) ,『みじめな奇跡』 Misérable miracle (1955) ,『騒々しい無限』L'Infini turbulent (1957) ,『精神の大いなる試練』 Les Grandes Épreuves de l'esprit (1966) ,『眠り方,目覚め方』 Façons d'endormi,Façons d'éveillé (1969) など。神秘主義と狂気の交点に立つ独自の詩境を開拓,存在の不条理に対する夢魔的世界を定着し,シュルレアリスムの正統的継承者として,現代フランスの代表的詩人の一人と目されている。画家としても 1930年代から活躍,特に 1956年からメスカリンを服用して描いたことで有名。

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百科事典マイペディア 「ミショー」の意味・わかりやすい解説

ミショー

フランスの詩人,画家。ベルギー生れ。水夫として世界各地へ渡航後,ロートレアモンの影響を受けて詩作を始め,《私は誰だったか》(1927年)以下の散文詩集で〈内的空間〉を探り続ける。かたわら絵にも才能を発揮。アンフォルメル絵画の先駆とされる。幻覚薬メスカリンを試飲して幻想と狂気を体験,デッサンを付して,《惨めな奇跡》(1956年),《荒れ騒ぐ無限》を刊行。他に《夜動く》(1935年),《試練・悪魔祓い》(1945年)。
→関連項目ペヨーテルトスワフスキ

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