翻訳|Matthew
1世紀半ばの,イエスの十二弟子の一人として数えられている人物(《マルコによる福音書》3:18,《マタイによる福音書》10:3,《ルカによる福音書》6:15など)。ただし《マタイによる福音書》は彼を〈取税人〉と呼び,さらに《マルコによる福音書》2章14節のレビなる人物と同一視している(9:9)。マタイ,レビともにヘブライ名なので,二つの名を同時にもっていたとは考えられず,その関係は不明である。2世紀前半のパピアスは,このマタイが《マタイによる福音書》を書いたとしており(カエサレアのエウセビオス《教会史》),エイレナイオス,テルトゥリアヌス,オリゲネスもそれを支持しているが,この伝承の信憑性は疑われている。
執筆者:青野 太潮
福音書記者として描かれるときの象徴は天使(有翼の人間)。本と筆をもち,天使の言葉を筆記する姿でも表される。拷問具の槍や,以前の職業(取税人)に関連する財布,天秤なども持物。取税人の職を捨ててキリストに従ったことを示して,財布を踏みつけていることもある。説話場面としては,取税所で仕事中,通りかかったキリストによび出される場面(いわゆる〈マタイのお召し〉。《マタイによる福音書》9:9など)が近代絵画に多い。キリストを交えてのレビ家の饗宴(《ルカによる福音書》5:29など),エチオピアでの奇跡,殉教などの場面も表される。祝日は9月21日。
執筆者:井手 木実
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イエスの直弟子で、いわゆる十二使徒の1人に数えられている。「マタイ伝福音書(ふくいんしょ)」によれば、このマタイは取税人で、収税所に座っているときにイエスから呼びかけられ、ただちに彼の弟子になった。ところが、「マルコ伝福音書」と「ルカ伝福音書」は、(アルパヨの子)レビについて、同じような召命の場面を描いている。ここから、マタイとレビが同一人物であるかどうかが長い間議論されてきたが、結局、両者を同一視するための決定的根拠はみいだされていない。また、古代教会史家エウセビオスは、使徒マタイがヘブライ語で福音書を書いたという古い伝承を記しているが、近年では、使徒マタイと福音書記者マタイを区別する説のほうが有力である。しかし、両者がまったく無関係であったともいえず、なお問題が残されている。そのほか、マタイの伝道や殉教をめぐっても、種々の伝承があるが、その根底に潜む史実は依然として不明である。
[土屋 博]
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…76年に国連に加盟した。 トンガとともに典型的なポリネシアの国で,南太平洋地域の伝統的な社会組織である首長(マタイ)制度が最もよく残っている。独立後,1970年代は高位のマタイが交代で首相の座についた。…
…大家族制が人々の生活基盤であるとともに,親族が互いに物を分け合い助け合って暮らすというのがこの社会の基本的モラルである。大家族のリーダーであるマタイ(首長)は代々伝わる称号名の保持者であるが,全サモア・レベルから村レベルまで首長称号の格付けが主として地縁組織を媒介としてなされている点に特色がある。サモアに根強いこの首長システムは,どちらのサモアでも国会議員の被選挙者を首長に限るなどの形で公的な政治の場にとり入れられている。…
… まずマルコは,受難・復活に至るイエスの生涯を上記(2)の伝承の編集によって復元し,(1)の伝承の宣教内容(福音)に史的状況をとり戻して,ガリラヤの民衆の位置に立ったイエスとの生を示唆することを目的として福音書を創出した。マタイの場合は,《マルコによる福音書》と(2)の伝承,とりわけQ資料(マタイとルカが,《マルコによる福音書》以外に共通の資料としたと考えられている,主としてイエスの言葉から成る仮説的な資料のこと。Qとはドイツ語Quelle(資料)の頭文字をとったもの)および特殊資料(各個福音書にのみ見いだされる特殊な資料)に拠り,彼独自の福音書を編集して,イエスの教えを旧約の律法の完成とみなす立場を打ち出した。…
…〈山上の説教〉ともいう。《マタイによる福音書》5~7章の通称で,この部分は5章1節と8章1節の状況説明によって,〈山上で〉語られたイエスの説教とされているためこう呼ばれる。この場合,〈山〉は当時のユダヤ教においては,旧約聖書が伝えるシナイ山での律法授与のできごと(《出エジプト記》19章以下)以来,神からの啓示と律法が与えられる聖なる場所と考えられていた。…
…その背後にはキリスト教律法学者(13:52参照)のグループが存在し,著者もその一員であると考えられる。十二弟子の一人のマタイを著者とする古代教会以来の伝統には信憑性がない。【大貫 隆】。…
※「マタイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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